爪ブラシはなぜ必要か? 効果と正しい管理方法をご紹介

爪ブラシはなぜ必要か? 効果と正しい管理方法をご紹介

食品工場やご家庭内など、様々な場所で爪ブラシが使用されています。しかし、「手洗いに爪ブラシは必要?」「衛生的に管理できるのか不安…」というお声をよく耳にします。そこで今回は、爪ブラシの効果と正しい管理方法についてご紹介します。

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爪ブラシの効果

手洗いは食中毒や感染症を防ぐうえで最も重要であり、手指が清潔であることで、手指を経由して細菌が製品に付着するリスクをなくすことができます。この手洗いにおいて、最も汚れが残りやすいのが爪部分です。なぜなら爪の溝の部分に溜まった汚れは、通常の手洗いで落とすことがとても難しいためです。手洗いの様々な研究では、手洗い後に爪部分に汚れが残りやすいことが指摘されています*1 *2

この、手洗いにおいて最も汚れが残りやすい爪部分の汚れを落とすために用いられるのが爪ブラシです。

バーテック製品:私の爪ブラシ

爪ブラシの使用により、爪の溝などにたまった汚れをしっかり落とすことが可能です。爪ブラシの洗浄効果について詳細な調査をされたのが、静岡県東部健康福祉センターの望月由布子氏です*3。本調査では爪ブラシを使用した場合と使用しなかった場合において、汚れがどれほど落ちたかを手洗いチェッカーを用いて調査しました。その結果、爪ブラシを使用することによって、爪部分の汚れが顕著に落ちることが判明しました*3

また、北海道文教大学助手の諸橋氏らの調査では、清潔な爪ブラシを用いて手指の洗浄を1回行った場合とブラシを使わずに2回行った場合で同じ洗浄効果が得られました。つまり、爪ブラシの使用によって短時間で効果的な手洗いができることが言えます*4

このように、爪ブラシを使うことによって汚れが残りやすい爪周辺を効率的に洗浄することが可能であり、学校給食法に基づく学校給食衛生管理基準では、学校給食従事者専用の手洗い施設には爪ブラシを常備することが義務付けられています。

図1: 爪ブラシ使用時、未使用時における汚れの残存状況(【望月2015, p. 5】より引用)

 

爪ブラシの管理方法とは?効果を発揮させるためのポイント

爪ブラシの効果を発揮させるためには、適切に管理できていることがとても重要となります。なぜなら、不適切な方法で管理した場合、有害微生物がブラシ上で増殖するなど汚染源となるリスクが高くなり、使用することがむしろ逆効果となるためです。したがって、爪ブラシを衛生的に使用するためには、適切な管理を行うことが重要なのです。

爪ブラシの適切な管理方法について、ポイント二点をご紹介します。

ポイント1:個別使用

爪ブラシを共用で使用した場合、他人の手指の汚染が爪ブラシを通して付着します。望月氏の調査では共用の有無で爪ブラシの汚染度を調べたところ、共用で使用した場合、RLU値(ATP清浄度)が個人使用の場合に比べて、3~5倍ととても高い数値となりました(図2)。これは、共用したことにより複数人の汚染がブラシに付着し、汚れが蓄積されたためと考えられます。他人の汚れが付着しないように、一人一つ個別使用することがまず必要です。

図2 共用することによる爪ブラシの汚染状況(【望月2015, p. 13】より引用)

ポイント2:接触させずに乾燥

ブラシをシンクに置くなどの管理方法の場合、接触面から汚れや微生物が付着することで、爪ブラシが汚染されます。そのため、ホルダーに入れて壁にかけたり、ラックに吊り下げたりするなど、接触しない管理方法を行いましょう。

ホルダーを付けられる壁がない場合は、当社の「私たちのブラシ楽ック」のご使用をおすすめします。こちらは、1台で最大60個のブラシを吊り下げられるため、使用者間での交差汚染を防ぐことができます。また、キャスターが付いているため、清掃時にも楽に移動ができ、ラック周りも清潔に保てます。

写真1:乾燥の方法(壁・ラック)


上記二点の『個別使用』『接触させずに乾燥』に加えて、一日一度の消毒を行えばさらに効果的です。ブラシをつけ置きをする場合は、次亜塩素酸200ppmで20~30分程度が望ましいでしょう。ただし、爪ブラシの使用の際に手指用洗剤で洗っているため、その後非接触の状態で乾燥させれば、消毒を行わなくても問題はないと考えられます*5。実際、『ブラシの適切な管理方法〜二次汚染を防ぐ2つのポイント〜』に記載のように、バーテックでは、爪ブラシを含む当社のブラシの管理方法とRLU値(ATP清浄度)について調査しました。その結果、洗浄後乾燥させることでRLU値を500以下に抑えることが可能という結果となりました。上記の方法は決して難しいものではなく、手間もかからない管理方法であると言えるでしょう。

よくあるご質問:爪ブラシの使用による手荒れの可能性について

ここで、爪ブラシに関するよくあるご質問とその回答をご紹介します。

「爪ブラシを使用することにより皮膚表面に傷がつき、手が荒れる可能性はありませんか?」とご質問をいただくことがありますが、一般的に爪ブラシは毛が柔らかく、皮膚が荒れる可能性は低いと考えられます。しかし、手がデリケートな方もいらっしゃるので、そのような方は通常よりも毛が柔らかいブラシの使用をおすすめします。

まとめ

どのような道具でも、適切に使うことによってその能力が最大限に発揮されます。手洗い用洗剤を使用して手洗いすると同時に爪ブラシも洗浄することができます。そして、使用後は水を切ってホルダーに入れ、個別管理で壁にかけて乾燥させることにより、ブラシの衛生状態を保つことができます。手指の中で最も汚れが溜まりやすいのは爪部分です。爪ブラシはその汚れを落とすことに効果があります。洗浄効果を最大限発揮させるために適切な管理を行いましょう。清潔な爪ブラシを用いることで、効果的な手洗いが可能となります。

一般的衛生管理はHACCPの土台となるものです。清掃道具が汚染されていると、清掃するどころか逆に汚染を広げてしまうこととなります。そのため、道具を適切に管理して、道具本来の目的を果たし、一般的衛生管理の質を高めていきましょう。

 

参考文献

*1仲宗根洋子他2001「洗い方と洗い残しの結果からみた看護者の手洗い法の特徴-看護教員と他の教職員との比較」『沖縄県立看護大学紀要第2号』pp. 18-26.

*2山口雅子他 2006「効果的な手洗い指導法の検討」『大学教育実践ジャーナル』4, pp. 9-16.

*3望月由布子2015「爪ブラシの衛生的な管理方法の検討」 平成27年度全国食品衛生監視員研修会発表資料.

*4諸橋京美他2010「特定給食施設における調理従事者等の手洗い方法の検討」『北海道文教大学研究紀要』34, pp. 81-85.

*5加藤光夫2017「手洗いの設備と使い方」『月刊食品工場長』2017年12月号, p. 62.

生駒俊和他2015 「新潟県の食品取扱業者におけるノロウイルス感染予防対策の実際と不顕性感染者の頻度」『医学検査』64-2, pp. 155-162.

紫藤優子他2012「食品工場における爪ブラシの管理状況及び汚染状況」『環境管理技術』30(2), pp. 85-90.

米虫節夫2018「衛生管理の基本は手洗いの教育から始まる」『月刊食品工場長』2018年5月号, p. 55.

水野優子他2013「食品工場における爪ブラシの有効性検証」『環境管理技術』31(2), pp. 72-77.

山田千夏他 2008「ATPふき取り検査と手洗いチェッカーを用いた衛生教育の有効性」『日本農村医学会雑誌』58(1), pp. 46-49.

 

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