ブラシのプロが紹介する、衛生管理のポイントとは?

ブラシのプロが紹介する、衛生管理のポイントとは?

厚生労働大臣が承認する食品製造・加工の衛生管理システム「HACCP」(危険分析必須管理点モニタリングシステム)に取り組み、業績を上げている中小企業が増えています。HACCPにおいては、調理などに使う機械・器具などを洗浄するブラシも重要なポイントの一つ。清潔なブラシは、清潔な生産現場を保ち、製品の品質に直結するだけでなく、そこで働く従業員の労働環境をも向上させます。今回は、ブラシの適正な扱い方や衛生管理方法を“ブラシのプロ”が解説します。

プロが紹介する衛生管理ブラシのポイント

食品の製造現場で使用される衛生管理用ブラシは、家庭で使われる清掃用ブラシとは要求される性能が異なります。製造現場での衛生管理は製品の品質に直結する問題で、いわば「食の安全」を握っていると言っても過言ではありません。いくら製造設備が優れていても、その環境に問題があれば、汚染という事態を引き起こしかねません。それを防ぐためのベースにあるのが「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「習慣」のいわゆる5S活動です。ブラシはそのための重要な役目を担っています。ここでは、衛生管理用ブラシに求められる性能や、ブラシを活用した衛生管理のポイントなどについて見ていきましょう。

衛生管理用ブラシに求められる性能

1.毛が抜けにくい
2.抜けても発見しやすい
3.さまざまな形状、個所の清掃ができる
4.煮沸消毒や薬品による洗浄ができる

衛生管理用ブラシに求められる性能は、次のようなものがあります。1つは毛が抜けにくいこと。清掃後にブラシの毛が残っていては、それが製品に混入する恐れもあり、これでは安心して使うことはできません。このため、毛が抜けにくい植毛方法を使ったブラシであることが必要になります。

2つ目は万一、毛が抜けてしまった場合、その毛を発見しやすいこと。かつ、その毛が製造工程のどのゾーンで使われたブラシなのかが分かることです。このため、ゾーンごとに赤、青、白など、ブラシの色を変えられることが必要となります。

3つ目はさまざまな形状、個所の清掃ができることです。製造現場は製造する製品や、生産設備などによって多種多様です。中には他にない特殊な形状になっている部分もあります。こうした個所は一般のブラシでは対応できないこともあり、衛生管理用には特殊な形状をしたブラシが開発されています。

4つ目が煮沸消毒や薬品による洗浄ができることです。衛生管理は食品を製造する上での要です。さまざまな菌による汚染は最も避けなければなりません。ブラシに付着していた菌が汚染源になることは盲点となりがち。ちょっとした不注意が大きなトラブルにつながることにもなります。このため、衛生管理用ブラシは消毒や洗浄に耐えられるよう、耐熱性や対薬品性に優れた材質であることが要求されます。

ブラシに応じて、適切な使い方をする!

ブラシは用途や目的などによってさまざまなものがあり、用途に応じて適切に使うことが大切です。正しい使い方をしなければ、そのブラシがもっている清掃機能を十分に発揮させることはできません。場合によっては思わぬケガをすることにもなりかねません、

たとえばたわし製品は、使用する際、手で強く握るのは避けます。基本的に毛の集まりのような構造なので、強く握ると変形してしまう恐れがあります。多くのブラシはプラスチックなどの植毛台に毛が植え付けてあります。清掃の際、あまりブラシを押しつけて使わないでください。毛が変形してブラシの性能を損なことになります。そうなっては細かい部分に清掃が行き届きません。

鋭利な刃物や機械装置の角などの清掃に使う際は、ブラシの毛が切れる可能性を考えて使ってください。切れ毛が発生すると、ブラシの性能が落ちると同時に、切れて落ちた毛が刃物や機械装置に付着して、場合によってはその性能に影響を及ぼすことにもなりかねません。

どのブラシにも言えることですが、ブラシは毛先が汚れを落とします。強く押し付けてブラッシングすると、その毛先が仕事をしにくくなります。それどころか、返って汚れをこすりつけていることにもなりかねないので注意してください。

使用する前には、必ずブラシ全体を洗浄し、付着物がないことを確かめてください。付着物があるとブラッシングした部分を傷つけてしまう恐れがあります。

用途に応じた適切なブラシを選定する!

ブラシは用途に応じてそれぞれの機能をもったものがあります。用途に応じて最適のブラシを選定することが必要です。形状や毛の素材など、汚れに応じたものを使用しないと効果は得られません。たとえば、水回りの清掃には吸湿・吸水率が低いPBT(ポリブチレンテレフタレート)製のブラシを使用することで、水切れが早くなり、ブラシを衛生的に保つことができます。

耐摩耗性、耐水性、耐薬品性など、ブラシは使用環境に合わせて選定するようにしましょう。食品工場や医薬品工場でのコンタミネーション(異物混入)を防止するため、金属探知機で検出できる樹脂を使ったブラシなどもあります。

形状や素材だけではありません。たとえば配管用の清掃ブラシだと、配管の径に留意する必要があります。直径10ミリの配管に15ミリや20ミリ用のブラシを使用すると、ブラシの毛は痛みますし、何より配管そのものを傷つけてしまいます。

ブラシの管理方法を徹底する!

使用した後のブラシはしっかり洗浄し、衛生的に管理することが大切です。管理がおろそかになると、その間に雑菌が繁殖してしまいます。そのまま知らずに使用すると、汚染されたブラシで製造工程の二次汚染につながる恐れがあります。これでは何のために清掃したのか分からなくなってしまいます。

使用後のブラシは殺菌剤や洗剤などに漬けた後、乾燥させることが大切です。洗浄する場合も同じです。乾燥が十分でないと、殺菌能力のない洗剤を使っていた場合、微生物が増殖する危険性が高くなります。確実に乾いたことを確認しましょう。

ただし、洗剤や殺菌剤などにあまり長時間漬けると、ブラシどうしの交差汚染や液内での微生物の増殖といったリスクが発生するので注意が必要です。

ブラシは使用後の管理をしっかりしてこそ、安心して次の清掃ができ、それは製造工程の安全を保つことにつながります。洗浄するにしろ浸漬するにせよ、自社の使用方法のクセを把握しておき、最適の管理体制をとることが大切です。

ブラシの保管の仕方

ブラシの管理で意外とおろそかになりがちなのが保管方法です。ブラシ、ほうき、雑巾、ゴミ袋、バケツなどを1つの保管庫に入れた状態では、雑菌などの微生物に対してあまりにも無防備です。密閉されているからといって安心はできません。虫やゴミなどは雑菌が増殖する温床になります。用具の保管にも細心の注意を払いましょう。

“吊り下げ”保管しましょう

掃除用具入れの中にいろいろな清掃用具を押し込んで、それらが接触していると大変です。たとえば雑巾に付着している微生物が増殖し、ほかの清掃用具に移ってそこでまた増殖するリスクが生じます。これではいくらブラシをきれいに洗浄して乾燥させても意味がありません。

ブラシは原則、吊り下げて保管します。また、密閉された中でなく、風通しのよいところに保管することがポイントです。吊り下げることで他の清掃用具などとの接触を防げ、風に触れさせておくことで湿るのを防止できます。この保管を徹底することで衛生面が向上します。

可能であれば、ブラシの先端が床から60センチ以上離れていることが理想です。床は言ってみればもっとも汚れた部分で、場所によっては常に湿気を帯びています。微生物が増殖するには絶好の環境とも言えます。ブラシを床に立てかけておくなどもってのほか。同時に、二次汚染を防止するためにも、横のブラシとも一定の間隔を開けるようにしてください。

清掃用具は言わば水面下で仕事をするもので、普段、人目にさらすものではありません。つい見えないところにまとめてしまっておくということになりがちです。しかし、ここに落とし穴があると思ってください。製造現場の衛生管理を徹底するには、まず、ブラシなど清掃用具の衛生管理からです。

働いている従業員の見えるところに吊り下げておくのも効果的です。衛生面だけでなく、従業員の管理意識の向上にもつながります。

ブラシの交換の時期を決めましょう

ブラシは使用しているうちに毛が摩耗したりして劣化していきます。清掃機能は落ち、そのまま使用していても十分な能力を発揮できません。ブラシを交換するタイミングをあらかじめ決めておき、その時期がきたら必ず交換しましょう。小さいコストを惜しむ余り、あとで大きなコストを負担する事態になっては本末転倒です。

交換時の目安は?

交換の目安をご紹介しましょう。まず、ブラシ本体に変形や割れ、ひび、あるいはその他何らかの欠陥が発生した場合は、すぐに取り換えてください。そのまま使用していると破損につながり、機械装置を傷つけたり、あるいは使用者本人が思わぬケガをしたりすることになりかねません。

次いでブラシの毛が変形した場合です。こうなると当初の機能が発揮できなくなり、十分な清掃ができません。清掃というのは非常に細かい作業で、毛先が仕事をするものです。変形や切れは、もうその機能が果たせなくなった状態と言えます。

交換時期が誰にでも分かるように、実際に時期がきて交換したブラシの写真をいくつか撮っておき、清掃用具の保管場所に貼っておくのも一策です。「こういう状態になったら交換する」ということが明確になり、徹底できるようになります。

ブラシの交換は衛生管理や異物混入といった生産現場の環境だけでなく、労働安全という面からも必要です。交換時期がきたら、必ず交換するようにしましょう。

衛生管理はあくまでも人の手で

製造工程はどんどん自動化が進み、高品質の製品を作れるようになりました。しかし、衛生管理となると、これは人手に頼るほかありません。製造現場での「5S」や「食の安全」を担うのはあくまでも人なのです。ブラシを握る際には、ぜひこのことを頭に浮かべてみてください。

食品系工場の衛生管理担当者が知っておきたい

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