食品工場の異物混入について解説!清掃用品が引き起こす5つの要因とは?

食品工場の異物混入について解説!清掃用品が引き起こす5つの要因とは?

食品事業者にとって、製品への異物混入を防止することは、食品安全の観点から非常に重要です。異物混入によって信頼を失うことは、企業にとって大きなダメージとなり得ます。そのため混入ルートを把握し、予め対策を講じておくことが何よりも大切です。

異物混入の主な要因は、生物由来(昆虫やネズミなど)、人由来(毛髪など)、工程由来(金属片、ガラス片、樹脂など)に分類できます。今回は、工程由来の一つである、『清掃用品由来の異物混入』について紹介します。清掃用品を正しく選定、使用、管理することで、一般的衛生管理の効果を高めていただくと同時に、清掃用品由来の異物混入のリスクを低減させましょう。

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異物混入の内訳について

図1は2014年4月~2016年11月にかけて全国127自治体の保健所に寄せられた、食品混入した異物の分類です。金属、樹脂、ゴム、ガラス、ビニール、繊維といった、食品製造工程で使用される設備、道具から混入したと考えられる異物の割合は3割以上に上り、大きな割合を占めていることがわかります。

図1【高橋他2019, p. 28】の図を加工

この要因の一つとして、清掃用品が挙げられます。清掃用品は、食品を扱うまな板や各種機器と接触するため、その一部が取れたりすると、直ちに異物混入につながります。それを防ぐためには、清掃用品の「正しい選定」「正しい使用法」「正しい管理」が何よりも大切です。次のチャプターでは清掃用品の異物混入について、その要因と対策をご紹介します。

清掃用品による異物混入~5つの要因と対策~

製品に動物毛を使っている

食品工場において、馬毛を線材としたほうきなどが使用されている場合があります。動物毛は非常に切れやすく、切れた毛が異物混入の原因となります。このことを実証するため、馬毛フィラメントと、食品工場向けブラシ線材に用いられるPBTフィラメントで、切れやすさを比較した試験結果をご覧ください(表参照)。

馬毛とPBTは、線径の差は3倍未満ですが、切れやすさは16倍以上も違います。この切れやすさの差は、そのまま異物混入リスクの大きさの差を示します。そのため、ほうきなどの清掃用品は、線材にPBTを用いている製品を使用することが望ましいと言えます。

清掃用品の毛が広がっている

例え食品工場用の清掃用品を用いていても、写真1のように毛が広がっていると、異物混入のリスクは高まります。これはフィラメントの束から毛が飛び出ている状態です。使用中に飛び出た毛が引っ掛かることで抜ける確率が高まり、異物混入につながる恐れがあります。

写真1 :長期間の使用により毛の広がったブラシ

このように毛が広がる要因は主に以下の2つが挙げられます。

・交換時期を過ぎて使用している

・不適切な選定・使用

ブラシは消耗品ですから、定められた交換時期を守ることが大切です。しかし交換時期は正しい使用法において定められた目安ですから、誤った使用法をしていてはその期間を待たずに劣化してしまいます。

ブラシは、毛先を使い叩くようにして汚れを取る使い方が最も洗浄効果が高まります。しかし、力任せに押し付けて使うと、ブラシの先端ではなく腹の部分を使うことになり洗浄効果が落ちるだけでなく、毛が広がりブラシの寿命を縮めてしまいます。

また、清掃箇所のサイズに合っていないなど、不適切な選定によってもブラシに負荷がかかり、抜けや切れにつながります。写真2のように、パイプの内径よりも大きな外径のパイプ用ブラシを使用した場合、フィラメントに大きな負荷がかかります。このように、食品工場用のブラシを用いた場合でも、正しい選定と使用を行わないと、抜けや切れのリスクは高くなりますので、注意が必要です。

写真2 :不適切な選定により毛の広がったブラシ

ほうきの柄が樹脂製

清掃用品の異物混入の要因となるのはブラシだけではありません。ほうきの柄にも注意しましょう。ほうきのステンレス柄などの上から樹脂被膜を巻いている場合、経年劣化により写真3のように必ず剥がれます。そして樹脂が剥がれるとそれが異物混入の原因となります。対策として、ステンレス製のほうきの柄を用いることにより、被膜が剥がれ混入するリスクがなくなります。

写真3:樹脂が剥がれたほうきの柄

タオル・雑巾

タオル・雑巾も食品工場でよく用いられていますが、これも異物混入につながるリスクの一つです。使用中にほつれた非常に小さい繊維は、目視で確認できないことが多く、異物検出器による検知も容易ではありません。そのため、タオルや雑巾の代わりに、耐久性の高いワイピングクロスや、ほつれないカウンタークロスを使用することが望ましいでしょう。

スポンジ

食品工場でもご家庭でも非常によく使われるのがスポンジです。スポンジは、安価で泡立ちがよく、柔軟性があるため非常に使いやすいというメリットがあります。しかし柔軟性の代償として、写真4のようにちぎれやほつれが発生しやすく、ちぎれたスポンジ片が異物混入の原因となります。スポンジを使用する際は、一般的なスポンジではなく、ネットで覆うなど、充分に異物混入対策がされている食品工場用のものを使用することが望ましいです。

写真4:ほつれたスポンジ

また、スポンジは水分を吸収しやすく乾燥しづらいため、微生物が繁殖しやすい環境となります。管理が不適切であると、写真5のようにスポンジにカビが発生する場合もあります。そのためスポンジの管理は、煮沸消毒を行うなど、微生物が繁殖しないように気を付けて行う必要があります。

写真5:カビの生えたスポンジ

番外編:ダンパー

清掃用品ではありませんが、工場では、写真6のようにダンパーの鉄被膜が剥がれているケースがよく見られます。このような状態だと、剥がれた鉄被膜が製品に混入するリスクがあります。被膜部分を保全することが望ましいと考えられます。

写真6:ダンパー

まとめ

今回は、異物混入の要因の中から、清掃用品由来のものに注目してご紹介しました。清掃用品は、直接食品に触れる場所で用いられるものですから、「誤った選定」「誤った使用法」「誤った管理」によって、異物混入のリスクを著しく高めてしまいます。異物混入の発生により、製品回収や謝罪対応で膨大な時間と資金、労力がかかるだけでなく、企業として信頼を失ってしまうことにもつながります。

清掃用品の「正しい選定」「正しい使用法」「正しい管理」を意識することで、異物混入のリスクを確実に低減させることが可能です。これらに悩まれた場合には、ぜひ弊社にご相談ください。

【 参考文献 】

高橋朋也他2019 『最新の異物混入防止・有害生物対策技術』株式会社テクノシステム, 402p.

 

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