【衛生管理】食中毒を引き起こす「クロスコンタミネーション(交差汚染)」を防ぐには?
食中毒予防は、病原菌を「付けない」「増やさない」「排除する」が大原則。ところが、食品加工や調理、盛り付けの過程などで病原菌が逆に付いてしまうこともあります。これを「クロスコンタミネーション(交差汚染)」といい、人的ミスが要因です。交差汚染を起こさないためには何が重要なのでしょうか。
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クロスコンタミネーション(交差汚染)とは?
クロスコンタミネーション(交差汚染)とは、病原菌の汚染度が高いものが、汚染度の低いものに接触することによって広がる汚染のことです。すでに加熱した食品やそのまま食べられるような食品においては、クロスコンタミネーションが食中毒発生の主原因となることが多いとされています。
クロスコンタミネーションが起きる理由
クロスコンタミネーションが起こる理由は、病原菌の汚染源や汚染ルートによっていくつかに整理することができます。「何からどうやって汚染されるのか」を押さえておけば改善策が見出され、リスクを回避することができます。
クロスコンタミネーションは、従業員などの「ヒト」、「食品や原材料」、「水や冷却水」、「機械や器具」、雑巾などの「モノ」、施設内の空気や床などといった「環境」が媒介するため起こります。
ヒトからの感染
従業員が加熱前の材料に触った後に、加熱後の製品を扱うことによって汚染が発生する場合があります。せっかく加熱滅菌しても、細菌の付いた手や衣服などで触れてしまえば台無しです。細菌の付いた人と細菌の付いていない人が接触することで、細菌の付いていない人が汚染されることもあります。
これを未然に防ぐためには、工場内の工程や作業を見直す必要があります。清潔度に応じて区画したうえで、人が交差しないように動線を整理し、機械設備を配置するなどが考えられます。工場内を改めて俯瞰し、交差汚染が起きる可能性をチェックしたうえで、防除できる仕組みに組み替えていくのです。工程の中に、汚れているモノに触れた手指や着衣は洗浄する、消毒する、着替えるといった作業を挟むなどして、クロスコンタミネーション(交差汚染)の可能性を一つひとつ排除していきます。
モノからの感染
モノからのクロスコンタミネーション(交差汚染)の原因として、食品及び原材料からの汚染が挙げられます。効果的な予防方法は、生鮮食品の貯蔵、調理、陳列時に生の原材料、中間製品、調理済食品を隔離しておくことです。汚染度は生から調理、加工を経るにつれて低くなりますが、病原菌は汚染度の高い状態から低い状態の場所やモノへと汚染していく性質があります。この連鎖を断つため、隔離は有効です。保管する場合も、保管庫や冷蔵庫など食材ごとに特定の場所を決め、専用の容器を用いてクロスコンタミネーション(交差汚染)を遮断するなどします。
水や冷却水も汚染の原因となります。食品加工に用いる水や製氷用水は飲用に適したものでなければなりません。水道水であっても、工場内の貯水タンクにいったん貯めて使用するような場合は、タンク内の水が汚染しないよう適切な管理が必要です。
何らかの理由で汚れたままになっているまな板や包丁、布巾などからのクロスコンタミネーション(交差汚染)もしばしば起こります。食品の下処理には、肉類や野菜類など、それぞれ専用の器具を使い分けて用いなければなりません。何に使う器具なのかを一目で認識できるよう色や形を変えるなどしてくといいでしょう。加熱前と加熱後で同じ機械・器具を使用する場合は、十分な洗浄・殺菌が必須です。
そのほかにも施設内において空気の流れ込みや床からもクロスコンタミネーション(交差汚染)が起こります。汚染区域からの空気が清潔な区域に流れ込むことや、汚れた水が床から跳ねあがり加熱後の食品を汚染することもありえます。このためにも工場内の仕事を見つめ直し、清潔度に応じて区画する必要があります。
なお、汚れた水が床から跳ねあがることを防ぐためには、作業台面を床面から80cmほどの高さにしておくことがポイントとなります。もし高さが確保できない場合は、跳ね水が入らないよう覆いをするなどといった工夫が必要です。
クロスコンタミネーション(交差汚染)対策としてブラシを色分け
衛生管理を確実に実現するためには、調理に使う機械・器具などを洗浄するブラシの選び方や使い方、保管方法が重要なポイントとなります。食品加工場などで使うブラシは、市販のブラシでなく、業者向けの衛生管理用ブラシを使いましょう。衛生管理用ブラシは、毛が抜けにくい植毛方法が施されており、かつ抜けた毛が発見しやすいよう色分けされています。特殊な箇所も清掃できるよう様々な特殊形状に加工されているうえ、耐熱性も高い。また、耐薬品性のある材質を使っているため煮沸や薬品による消毒ができるといった強みもあります。
クロスコンタミネーション(交差汚染)の防止
ブラシによってクロスコンタミネーションが起きてしまえば元も子もありません。発生させないよう、使い方や保管方法に注意を払う必要があります。ここでも、ブラシごとに色分けすることが重要となります。
清掃区域や調理する食材ごとに色分けし、洗浄区域を明確にできる
ブラシは清掃区域や調理する食材ごとに色分けし、使用することでクロスコンタミネーション(交差汚染)のリスクを回避することができます。保管について、暗くてほどよい温度・湿度が保たれる密封空間では、かえって菌の繁殖を促します。このため、誰にでも見えるところに吊り下げることが有効です。ブラシの取手の先端にはフックをひっかけるための穴があるので、これを利用してください。
保管時には、乾かして保管することや隣のブラシとくっつけないこと、床から60cm以上離しておくことがポイントとなります。吊り下げるボードは風通しのいい金網状のものを使用してください。ブラシごとに[長柄 赤][長柄 黄][金探 短柄][短柄 白]と用途や色に応じて名前を付け、保管する場所に名札とそれぞれの使用し始めた日をつけておくとよいでしょう。整理整頓しやすく、使用状況や交換時期も一目でわかり、管理が徹底されます。
万が一の混入時にも、目視で除去がしやすい
ブラシごとに色分けすることで、使用や保管時に万一ほかのブラシが混入していても、目視で確認でき、クロスコンタミネーション(交差汚染)を未然に防ぐことができます。パイプ状の器具などを洗浄するブラシは、パイプのサイズや用途ごとに様々な仕様があるため、混乱しないよう色分けしておくことが必須となります。
HACCP対策としても、ブラシを色分けしよう
食品製造における衛生管理システム「HACCP」(危険分析必須管理点モニタリングシステム)に取り組み、業績を上げている中小企業が増えています。HACCP(ハサップ)とは、食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生する恐れのある微生物汚染等の危険をあらかじめ分析、監視などすることで製品の安全を確保する衛生管理手法のことです。
ブラシによる清掃、洗浄は病原菌の侵入、増殖などを断つ基本的な作業ですが、使用、保管方法をルール化し、徹底しなければ交差汚染のリスクが高まります。ブラシの色分けはそのリスクを回避する基本といえるでしょう。このことによりHACCPへの取り組みは推し進められ、食中毒などの事故やクレーム処理は軽減。取引先との信頼関係が向上していくといった好循環につながります。
まとめ
クロスコンタミネーション(交差汚染)を未然に防ぐためには、その原因となるコト、モノを見つけ、可能性を排除していく必要があります。このため、工場内の作業工程の見直しや区画整理、清掃や洗浄作業に使うブラシの色分けがポイントとなります。ブラシを色分けすることで、ブラシ1本1本が的確に使用、保管されていることを誰もが目視で確認できます。色分けブラシは、安全やHACCPへの近道とも言えるのです。
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ブラシの正しい使い方
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