【対談】食の安全を守るための衛生管理方法について語る~食品工場の発展のために、活用すべきツールとは!?~

【対談】食の安全を守るための衛生管理方法について語る~食品工場の発展のために、活用すべきツールとは!?~

バーテックでは、新たなビジョン「働く人々を笑顔にし、より良い環境を未来へつなげる!」の実現に向け、お取引先様や業界関係者様とのパートナーシップに力を入れています。「てくてく通信」では、パートナーシップをより強固なものにし、新たな価値を生み出すために立ち上げた対談企画をご紹介しています。
対談企画第2回目は、HACCP(ハサップ)や一般衛生管理の普及のためにセミナー事業やコンサルティング事業を展開している株式会社フーズデザイン代表の加藤先生と、弊社代表の末松との対談です。毎年バーテックフェアで講師をしていただいている加藤先生と、食品衛生の観点から、清掃に適したブラシやHACCP Internationalなどの外部認証の重要性について、お話を交わしました。

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HACCPと一般衛生管理の普及を目指すフーズデザイン

末松:まずは加藤先生とフーズデザインがどのような活動をされているのか、教えていただけますか。

加藤:HACCP(ハサップ)と一般衛生管理の普及のために活動しています。活動内容は大きくふたつあり、そのひとつ目がセミナーです。フーズデザイン主催で行っているものに加え、企業や農林水産省、自治体からの依頼を受けて、様々なテーマでのセミナーを行っています。そしてふたつ目が、工場のコンサルタント。こちらは現在、10社ほどの工場を同時に見ています。

末松:そんな加藤先生から見て、食品工場の清掃や、建物の隙間を埋める重要性についてお聞かせください。

加藤:適切に清掃が出来ているか、建物の隙間を埋められているかどうかは、クレームに直結する重要な要素です。ただ、それが分かっていない工場や、分かっているつもりでも、まったく実践できていない工場がまだまだ多くあるというのが実態です。特に古い食品工場などは老朽化が進んでいるので、しっかり隙間を埋めているつもりでも、昼間に電気を消すと、あちこちから光が漏れてきます。そういったところから、虫は入ってきてしまうので、しっかり埋めてあげる必要があります。また清掃道具についても、食品衛生に適したブラシを使っているかで、工場の安全性やクレームの数、ブラシの耐久性は大きく変わってきます。

株式会社フーズデザイン 代表 加藤 光夫

食品衛生に適したブラシとは?

末松:食品衛生に適したブラシとは、どのようなものを指すのでしょうか?

加藤:まず重要なのが、毛が抜けずに、持ちやすいものですね。ホームセンターなどで売っているものや昔から使われている亀の子タワシなどは、よく出来ているけど毛が抜けやすいので、食品工場には向いていません。また近年のイギリスやヨーロッパのブラシは、性能は良いのですが大きくて重いため、日本人の手にはマッチしません。さらに洗浄区域と汚染区域区域では違うブラシを使う必要性があるので、ブラシの毛に色のバリエーションがあるのも良いですね。また食品衛生そのものに適していても、使う場所が適していなければ、毛が曲がったりして、すぐに使えなくなってしまいます。そのため溝用、穴用、ナイフ用のように、洗浄する場所や道具ごとに合わせたブラシを選定することも大切です。

末松:適切なブラシがあっても、それを有効に使い衛生管理を実際にするのは人なので、社員教育に困っている会社も多いというお話もお聞きします。これを解消する上手い方法はないのでしょうか?

加藤:実は簡単な方法がひとつあります。それは、工場全体を見る人と各部署ごとに、ひとりずつ”綺麗好き”がいれば、それだけで工場は綺麗になるのです。パートでもアルバイトでも構わないので、工場内に綺麗好きな人がいるなら、ぜひ各部署に配置してみて欲しいですね。残念ながら綺麗好きな人がいない場合は、時間を掛けて地道に教育していかなければなりません。

外部認証制度の重要性と普及について

末松:これまで、たくさんの工場をご覧になってきたと思いますが、HACCPの重要性について、日本の工場ではどの程度理解が深まってきていますか?

加藤:中小企業の工場も含めたら、半分以上はまだ分かっていません。しかし欧米では既に20年前から義務化されていて、日本も2018年の食品衛生法の改正によってHACCPの義務化が決定したので、これから理解は深まっていくと思います。

末松:NSF、EHEDG、HACCP InterNationalといった、衛生に関わる道具の外部認証制度についての理解については、いかがですか?

加藤:欧米では既に、外部認証を受けた道具以外は使っていけない時代になってきています。特にアメリカでは、外部認証を受けていない道具を使って食品の事故が起きてしまった場合、工場がその責任を100%取らなければいけなくなっています。そのため外部認証を受けた道具を使っていない工場は、どんどん発注が減って来てきているというのが現状です。こうした流れは、今後日本にもやってくるでしょうね。海外展開を考えているようなところは、既に導入を始めているところもありますよ。

末松:衛生面だけでなく、工場の経営を考えても、これからは外部認証を受けた道具を導入した方が良いということですね

加藤:“した方が良い”というより”しなければダメ”ですね。そもそも選ばない理由はないと思いますよ。外部認証を受けた道具は、先ほども話した”食品衛生に適したブラシ”でもあるので、洗浄の時間は短くなるし、より綺麗になる。また異物混入の事故も少なくなるのでクレームも少なくなる。ひとつひとつの値段は高いですが、価格差以上に長持ちしてくれるので、長い目で見れば安く済む……と、良いこと尽くめですから。

末松:ちなみにNSF、EHEDG、HACCP InterNationalといった外部認証が求めている基準は、加藤先生から見て高いものなのですか?

加藤:十分に厳しいと思いますよ。溝ひとつ取っても、鋭角ではなく、丸みを帯びた溝に加工されていなければ認められません。またボルトも上から下まで貫通していては、そこから汚れが入ってしまうのでダメです。さらに材質についても、細かなところまで基準が定められています。食品工場で、清掃道具の選定基準をどうするか迷っているなら、こうした外部基準の認証を受けていることを条件にしてしまっても良いと思います。

末松:これら外部基準が、日本に浸透するまでどれくらい掛かるとお考えですか?

加藤:時間は掛かるでしょうね。10年は掛かると思っています。しかしその10年の間にも、外部基準を取り入れている工場と、そうではない工場では、少しずつ発注の量に差が出てくると思いますよ。

末松:HACCPが義務化され、今度は外部認証の時代になってきましたが、そこから先は、どのようなステージに移っていくのでしょう?

加藤:今後は、動物福祉の時代になることが予想されます。例えば畜産であれば、屠畜をこういう風にしましょう、何平米に何匹・何羽しか飼ってはいけません、また魚なら、資源を守るために漁獲量を規定しましょうといった風に、細かい基準が既に出来てきています。実は日本でも既に、イオンが水産資源の保全に関わる「MSC」や「ASC」という認証を受けた魚を扱うという取り組みを行っています。鮮魚コーナーの商品を見ると、「MSC」や「ASC」と書かれたラベルが貼られているので、ぜひ一度見てみてください。

弊社・代表取締役社長 末松 仁彦

第3回バーテックフェアについて

末松:今年は、オンラインにてバーテックフェアを開催し、加藤先生より二大テーマ『HACCPセミナー~人手不足を改修と洗浄合理化で解決!~』、『食品工場が対応すべき新型コロナウイルス対策』についてご講演いただきました。
ご参加いただいた方からは、「実例があってわかりやすい」「時勢に合った内容で参考になる」などのお声をいただくことができました。
今後も、加藤先生とともに時宜を得た実りある内容をより多くの現場の方へお届けできるよう精進したいと思っています。
本日はお忙しい中、お時間をいただきましてありがとうございました。


加藤光夫先生 略歴

総合コンサルティング会社を経て、食肉コンサルティング会社へ移行。米国の食肉センター、食品工場、スーパーマーケット、フードビジネスなどの、運営、管理システム、商品開発手法、衛生管理手法 「HACCP」などを実習、研究、日本に紹介する。1984年、(株)フーズデザイン設立。食品の商品開発とHACCPの構築コンサルティングを行う。契約先は、食品メーカー、生協など。
・国際HACCP同盟 認定リード・インストラクター ・米国食品衛生管理資格者
会社データ
社名 株式会社フーズデザイン 
代表者  加藤光夫
設立  昭和59年(1984年)10月
資本金  1,000万円
所在地  〒180-0005 東京都武蔵野市御殿山1-4-16 メゾン井の頭1202
事業内容  HACCP・ISO22000構築コンサルティング、支援活動
HACCP構築のための資料集提供、セミナー実施
「食」関連の講演・セミナー

 

※ 取材日時 2020年3月
※ 取材・執筆 カスタマイズ

 

 

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