5分でわかる!コーデックス 「HACCPガイドライン2020年改訂」を解説

5分でわかる!コーデックス 「HACCPガイドライン2020年改訂」を解説

2020年6月完全施行されたHACCP制度化が原本としているコーデックス委員会(国際食品規格)のHACCPガイドラインが、2020年10月、17年ぶりに改訂されました。今回制度化された日本の「HACCPに沿った衛生管理」は、コーデックスがベースですので、コーデックスの改訂により求められる要求事項が変化すると、新たな対応が必要となります。そこで今回のお役立ち情報はHACCP International 日本韓国代表 淺井伸宏氏にわかりやすく改訂された内容を解説いただきます。

改訂の内容

改訂されたのは、食品衛生一般原則とHACCP付属文書です。コーデックスにおけるHACCPの位置づけは、以下の通りです。これは1~10を取り組み、さらに上の管理を目指し、付属文書のHACCPに取り組みましょうという位置づけです。

図1:改訂前のガイドライン

食品衛生一般原則
(GENERAL PRINCIPLES OF FOOD HYGIE)
CAC/RCP 1-1969(rev.2003)
序論(introduction)
SECTION
1.目的
2.範囲、用途、定義
3.一次生産
4.施設の設計及び設備
5.オペレーション・コントロール
6.施設メンテナンスとサニテーション
7.個人衛生
8.輸送
9.製品情報及び消費者意識
10.訓練
付属文章
HACCPシステムとその適用のためのガイドライン
HACCP7原則・12手順

改訂後のガイドラインは以下のように変更となりました。

図2:改定後のガイドライン

食品衛生一般原則
(GENERAL PRINCIPLES OF FOOD HYGIE)
CAC/RCP 1-1969(rev.2020)
序論(introduction)
目的、スコープ、使用、一般原則
食品安全へのマネジメントコミットメント
定義
第1章:一般衛生管理プログラム(GHP)(適正衛生規範)
SECTION
1.イントロ及び食品ハザードのコントロール
2.一次生産
3.施設-設備及び装置のデザイン
4.トレーニング及びコンペテンス
5.施設:メンテナンス、洗浄消毒及びペストコントロール
6.施設:従事者の個人衛生
7.オペレーションのコントロール
8.輸送
9.製品情報及び消費者意識
第2章:HACCPシステム及び適用のためのガイドライン

新しいガイドラインの構成は、以下の通りです。
①食品安全へのマネジメントコミットメント(食品安全文化を含む)が導入された
②一般原則が新設された
③文書全体の定義が示された
より注意が必要な一般衛生管理(GHP)を意味するGHP requires Greater Attentionの概念が導入された
⑤HACCPの定義がなくなり、HACCPプラン(食品ビジネスにおいて重要なハザードのコントロールを保証するためHACCPの原則に従って作成された文書)とHACCPシステム(HACCPプランの作成、及び当該プランに従って手順を実施する事)の二つの定義が新設された
⑥一般衛生管理(GHP)とHACCPを合わせたFood Hygiene Systemの定義が新設された
⑦Significant Hazardの定義が新設された

押さえておくべき改訂ポイント点

改訂された中で一般衛生管理(GHP)が強調されました。具体的には、一般衛生管理(GHP)とHACCPを合体した「食品衛生システム」の明確化されました。加えて、管理責任も合わさったため、コーデックスが掲げている「系統的なアプローチ」がより明確化したものといえると考えます。

HACCPの手法では、工程の中からハザード(Hazard)を洗い出し、その中で「リスクの高いもの」「許容限界(CL)でコントロール可能なもの」をCCP(重要管理点)として取り出し管理し、その他は一般衛生管理(GHP)で管理していきます。すなわち、一般衛生管理プログラム(GHP)に分類されたハザードはCCPによる管理は行いません。
しかし、実際の食品安全事故はこの一般衛生管理から起こっています。このような事態を鑑み、従来一般衛生管理に分類していたものから「極めて重要な」ものを取り出し、GHP requires Greater Attention(より注意が必要なもの)としてCCPと同様の厳しい管理を行うように、という内容です。

私が思うにアメリカの食品微生物基準諮問委員会(NACMCF)は、食品安全強化法(FSMA)にて、かねてから「予防コントロールはCCPのみの実施に限定されるものではない」としており、コーデックスが改訂されたことで、アメリカの規制に近づいたと解釈し、全世界的に規格が統一されたと言えるのではないだろうか。日本においてHACCP制度化は食品輸出など日本の食品産業の国際化及びインバウンド増加の後押しをする日本政府の「成長戦略」の一環です。日本の食品産業の成長の為には、必ず押さえておかなければいけないポイントになると考えます。

GHP requires Greater Attention(より注意が必要なもの)について

「より注意が必要なGHP」としてあげられるのが、アレルゲン対策における、サニテーションコントロールとサプライチェーンコントロールです。アレルゲンは時に死に至ることもあり、注意が必要です。具体的には原材料や使用する備品のアレルゲンの存在、受け入れ時、加工時、保管時のアレルゲン管理システムの整備や他の食品との交差汚染の予防 etc様々な対策を実施する必要があります。直接食べる物と接触する機器や表面の洗浄は特に注意を払う必要があります。そこに使われる容器、器具、包装は清掃がしやすく、分類が見分けやすく、清潔に保て、かつ異物混入がない必要があります。厚生労働省からも昨年「器具・容器・包装のポジティブリスト」が出されています。装置・設備においても、異物混入を防ぎ清掃がしやすく、有害小動物の侵入を防ぐSanitary Designが重要ですし、適切なレイアウト設計、設置が必要です。温度・湿度・その他のコントロールの為に適した設備が必要です。食品衛生一般原則には、さらに細かく、詳細が記述されています。今回、そこを詳しく述べるには、紙面が全く足りませんので、今後機会を設けて詳述致したいと思います。

まとめ

HACCPはいわゆる12原則7手順、食品製造・調理の現場でのオペレーション管理と理解されている方々が多いです。しかし、以前から米国NACMCFでは予防コントロールも合わせた管理を掲げていました。食品工場や流通で普及しているFSSC22000は予防コントロールも合わせた管理について要求しています。そのような中で、昨年改定されたコーデックスでも、予防コントロールまで含めた総合管理で見ていく必要性があると要求されるようになりました。このことから、機器・設備・備品で、世の中に「HACCP対応」と訴求している製品が多くみられるようになりました。「HACCP対応」とは一般衛生管理を容易にする機器を意味しています。ただ、日本の製品の多くは、各社それぞれで設定した基準で「HACCP対応」と設定しています。

自社で設定した基準が、コーデックスに沿った確かなものであるかどうか、第三者が審査・認定することのがHACCP Internationalのプログラムです。HACCP Internationalは、上記のような一般衛生管理に適した機器であるかということを、コーデックの視点で検査するプログラムを開発し、審査・認証する国際的な認証会社で、調理機器はもちろん、空調、床面、照明、ケミカル、ペストコントロール、備品、サービス等、広範囲にわたって、世界の1000社程の製品・設備・備品に認証をしています。
株式会社バーテックの衛生管理ブラシや防虫対策ブラシは、第三者認証機関であるHACCP Internationalの認証を受けており、食品工場・総菜工場・セントラルキッチン・各所厨房といった、食に関わる現場で、安心してお使いいただける製品となっております。

HACCP International 日本韓国代表 淺井伸宏氏

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