5Sは食品工場の環境整備に必須!具体的な効果や進め方のポイント、スムーズな遂行を実現するアイデアについて解説
5Sとは、食品工場の職場環境整備に向けた取り組みのことです。
食品工場では消費者の体内に入る商品を取り扱うため、日頃から清潔な環境を整えて作業することが求められます。食品工場で5Sを導入することで、「業務効率化を図れる」「納期を守って高品質な商品を製造できる」「従業員のモチベーションをアップできる」など多くのメリットを実現できるため、ポイントを押さえて実行しましょう。
今回の記事では、5S導入の具体的な効果や進め方のポイント、スムーズな遂行を実現するアイデアについて解説します。
食品工場における「5S」とは?
5Sとは、食品工場における「職場環境改善に向けた取り組み」のことです。以下の5項目を指します。
● 整理
● 整頓
● 清掃
● 清潔
● しつけ
各項目について詳しくチェックしましょう。
整理
5Sにおける「整理」とは、食品工場内の作業で必要なものと不要なものに分類することです。工場内の備品を必要な分だけ保管して、不要な物は処分します。
とくに食品工場では、食材や食品加工用の道具、機材、消毒液、作業着など多くの物を使うため、整理しなければ建物内に道具が溢れてしまいます。そのため「使わない食材や道具を適切に処分する」といった整理が必要です。
整頓
5Sにおける「整頓」とは、食品工場で使う食材や機材、備品、用具などを、従業員がスムーズに取り出せる場所に置くことです。
とくに食品工場では、食材の入荷や原材料チェック、下準備、加工、加熱処理、急速冷凍など、生産物に応じて幅広い作業が発生します。そのため、作業工程も増え業務で使う備品や用具も幅広くなりやすいでしょう。その中でスムーズに作業するには、「どの場所に・どの工程で使う道具が置いてあるのか?」の明示が大切です。
清掃
5Sにおける「清掃」とは、上記の整理・整頓を行ったうえで、毎回の作業ごとに道具や機材などをキレイに保つことです。
とくに食品工場では、消費者の体内に入る製品を扱うため、建物内を清潔に保つことが重要です。万が一、清掃が疎かになり病原菌やゴミが発生して食材に混入すれば、消費者に悪影響を与えるかもしれません。食中毒などが起きれば、企業への信頼は大きく損なわれます。
上記を防ぐためにも、食品工場では清掃の実施が重要です。
清潔
5Sにおける「清潔」とは、上記の整理・整頓・清掃を日常的に行い、常に食品工場を清潔に保つことです。食品工場内を清潔に保てれば、食材を安全に調理・加工して消費者まで届ける体制を構築できます。
従業員からしても職場が清潔に保たれているほうが、働くモチベーションを維持しやすいでしょう。
しつけ
5Sにおける「しつけ」とは、上記の4つを日常的に実行できるよう、従業員を含めた関係者に習慣付けることです。
整理整頓や清掃のルールを決めても「継続的に」実践できなければ意味がありません。習慣付けに成功しなければ、ルールが形骸化し働きやすい職場環境は実現できないでしょう。
5Sの導入が食品工場にもたらす効果は?
上記の5Sを導入することで、食品工場に以下のような効果がもたらされます。
● 安全な作業遂行体制を構築できる
● 業務効率化につなげられる
● 保全業務と適切に連携できる
● コスト削減につながる
● 工場作業員のモチベーションアップにつながる
● QCDを向上できる
安全な作業遂行体制を構築できる
食品に限らず工場内では安全な作業遂行体制の構築が必須です。
「作業道具が適当な場所に放置されている」「機械がメンテナンスされていない」といった食品工場では、事故の発生確率が高まります。例えば、原材料の開封作業で使う包丁が放置されていれば、誰かが誤って手を切るかもしれません。あるいは、食品攪拌装置の安全装置が作動せず、誤って人を巻き込むこともあります。
5Sを継続的に実践することで、上記のような食品工場内のリスクを取り除き安全な職場環境を構築できます。
業務効率化につなげられる
食品工場では、それぞれに具体的な作業手順が定められています。各手順で使う食材や道具、機械が決められているため、必要な物が作業場所の近くになければ探したり取りに行ったりする手間が発生し、非効率な業務になるでしょう。
5Sを実践し作業に必要な物を各工程の近くに配置すれば、従業員もスムーズに道具を調達し業務を進められます。
保全業務と適切に連携できる
5Sを実践し日常的に清掃や機械の点検を実施していれば、万が一異常があっても速やかに対処できます。
とくに食品工場では「食品を刻むスライサー」「食品攪拌装置」など、慎重に取り扱うべき機材が多くあります。そうした機材のトラブルにいち早く気付き保全業務と連携することで、従業員の安全を守れるでしょう。
コスト削減につながる
5Sによる食材や道具の適切な管理は、コスト削減にもつながります。
食材や道具の管理を各従業員に任せてしまうと、紛失したり必要なタイミングで見つからなかったりするでしょう。もしなければ新たに発注しなければならず、探す手間と合わせて余計なコストが発生します。
5Sを実践し「どの場所に・何があるか?」を把握できれば、こうした道具の紛失や探す手間を省き、結果的にコスト削減につながるのです。
工場作業員のモチベーションアップにつながる
5Sを実践することで、道具が整理されてスッキル保管されるだけでなく、食品工場内も清潔に保たれます。物を散乱させずキレイな職場環境を実現できれば、従業員も気持ちよく働けるようになり、モチベーションアップにつながるでしょう。
QCDを向上できる
QCDとは、「品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)」の頭文字をとった言葉です。
食品工場では、納期までに安全で高品質な商品を生産することが求められます。もちろん企業目線で考えると、コストは必要最小限に抑えたいところです。
5Sの実践によって、清潔な職場環境で高品質な商品を製造できるようになり、作業道具や食材をスムーズに取り出せるため業務効率も改善できます。業務効率が改善されることで、従業員に余裕が生まれモチベーションが向上し、納期も守りやすくなるでしょう。
結果として製品の品質を向上しコストも削減しつつ、納期を守って商品を完成させられる体制が整備できるのです。
5Sの具体的な進め方のポイント
実際に5Sに取り組む際は、以下の手順でポイントを押さえながら進めましょう。
1. 食品工場内で5Sを浸透させる体制を整える
2. 5Sの活動で達成したい目標を設定する
3. 目標や5S導入の重要性などを社内で共有する
4. 5Sを実行する
5. 実施した結果をもとにPDCAサイクルを回す
1.食品工場内で5Sを浸透させる体制を整える
5Sを実施するにあたっては「取り組みを継続させる体制の整備」が重要です。体制の整備方法としては以下が挙げられます。
● 5Sの専門委員会を設け社内からの意見や疑問を受けつる体制を作る
● 意見BOXを設置して現場からの改善案を積極的に吸収する
● 定期的にミーティングを開き5Sの実現状況や改善に関する話し合いを行う
● 社内で5Sの状況を共有するボードを設置する
2.5Sの活動で達成したい目標を設定する
浸透させるための取り組みが決まったら、5S活動で達成したい目標を設定しましょう。目標を定めることで、5Sを推進する方向性が明確になります。
目標は以下のように数値で設定すると、達成までに「何が・どれくらい足りないのか?」を洗い出し、具体的なアクションまで落とし込みやすくなります。
● 調理具の購入コストを前年度より◯◯%削減する
● 食材のロスを◻️◻️kg減らす
● 商品の品質を保ちつつ作業時間を××%削減する
また、最終目標の達成に向けて段階的な中間目標も設定すると、より進捗を計測しやすいです。
3.目標や5S導入の重要性などを社内で共有する
設定した目標や5S導入の重要性を、社内で共有しましょう。
繰り返しになりますが、5Sは継続的に実行できて意味を持ちます。継続的に実施するには、業務を行う従業員が5Sの重要性を理解することが必須です。実施によるメリット(業務の効率化・安全な職場環境の実現など)も共有することで、5Sを心がける動機付けになるでしょう。
4.5Sを実行する
5Sの目標や実施体制などが決まったら、いよいよ実行です。具体的に「食材や調理道具の置き場所を決める」「毎日の清掃ルールを決める」などを行い、一歩ずつ5Sを実現しましょう。
5.実施した結果をもとにPDCAサイクルを回す
5Sの実施後は、定期的に結果を見直しPDCAサイクルを回しましょう。
上記で解説したように、定期的なミーティングや社内意見の公募などを通じて「この調理道具は別の場所へ置いたほうが効率的に作業できる」「負担の偏りを解消するために清掃の割り振りを変えるべき」など、現場の意見を吸収し5Sの内容を改善することが大切です。
5Sをスムーズに遂行するためのアイデア
5Sをスムーズに実施するには、以下のようなアイデアを実行するのもよいでしょう。
● ルールが変更されたら適宜共有する
● チェックシートを導入する
● 専用の製品を導入する
ルールが変更されたら適宜共有する
「食材の保管場所が変わった」「清掃方法を変更した」など、5Sのルールが変更されたら適宜社内で共有しましょう。新しいルールを共有しておけば、社内全体で運用方法への意識を統一できるため、安定したクオリティで5Sを実現できます。
新しいルールの共有に抜け漏れがあると、一部の従業員が知らない間に古い方法で運用してしまい、せっかく整備した社内環境が少しずつ崩れる原因になるかもしれません。
チェックシートを導入する
5Sの実現に必要な項目をチェックシートに落とし込み、作業ごとに毎回記入してもらうのもよいでしょう。
チェックシートに記入してもらうことで、視覚的にも5Sの達成度合いを確認でき「どのくらい目標に近づいているか?」を判断できます。
厚生労働省が「5Sのチェックリストの例」をまとめているため、ぜひ参考にしてください。自社独自の項目を加えてもOKです。
専用の製品を導入する
5Sの継続的な実現には、専用製品の導入も効果的です。例えば弊社バーテックでも、5Sの実現に役立つ「7Sラック」を提供しています。
「7Sラック」は、食品工場内で使うブラシなどの衛生管理用品を効率よく管理するための製品です。以下のように、ブラシをかけるパネルに「ブラシごとのシルエット」が印刷されているため、迷わず直感的に収納できます。
シルエットの配置はラックごとにカスタマイズできるため、工場のニーズに合わせて製作可能です。
また、ブラシを浮かせて収納するため乾燥させやすくなり、食中毒の原因となる微生物の発生も抑えられます。衛生管理に敏感な食品工場でも安心して利用できるでしょう。
具体的な製品情報は以下をご確認ください。
5Sの意識を浸透させてよりよい職場環境を構築しよう
食品工場内の職場環境を改善するには、以下「5S」の考え方が必須です。
● 整理
● 整頓
● 清掃
● 清潔
● しつけ
5Sを実行し安全でスムーズな業務遂行体制を実現できれば、QCDや従業員のモチベーションアップにつながります。社内に5Sの意識が浸透するよう、定例ミーティングや社内意見ボックスの設置などを行いPDCAサイクルを回し、理想的な職場環境を実現させましょう。
5Sを実現させる際は、ぜひバーテックの製品の導入もご検討ください。
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