HACCP実装に不可欠な総合的有害生物管理(IPM)の必要性と実施方法

HACCP実装に不可欠な総合的有害生物管理(IPM)の必要性と実施方法

「IPM(Integrated Pest Management)=総合的有害生物管理」は、農薬使用の最適化を目指すことを目的に、国連食糧農業機関(FAO)によって推進されてきました。化学農薬が環境や人へ及ぼす影響を最小限に抑えるという観点から、消費者の食の安心・安全への関心が高まり続けているわが国でも、各地の農業の現場で広く浸透しつつあります。

一方で、建築物の衛生管理分野においても「ねずみ、昆虫などの防除」という部分で「IPM」の導入が広がっています。特に、衛生管理手法「HACCP」の義務化が迫る食品製造業界での取り組みが顕著です。環境衛生管理の現場における「IPM」はどのように施工すべきか、内容とともに詳しく解説します。

IPM(総合的有害生物管理)とは?

建築物の衛生管理分野でIPMの導入が取り組まれるようになったのは、「建築物衛生法」において、2003(平成15)年4月に適用された、ねずみや昆虫等の防除に関する施行規則がきっかけです。防除対策にあたって「人や環境への影響を極力少なくする防除体系のもとに実施」という点が求められており、厚生労働省は「建築物環境衛生管理基準」において、IPMによる防除体系を取り入れた施工方法を示すとともに、その導入を推進しています。

IPM(総合的有害生物管理)に組み入れるべき要素

いわばIPMの“本家”といえる農業では、「予防的措置」「病害虫の監視と防除判断」「新たな防除」という三本柱によってその体系が示されています。では、建築物の衛生管理においてのIPMは、どのように進めていくべきなのでしょうか。厚生労働省が「防除作業者のみならず、建築物の使用・利用者に、薬剤の不必要な乱用による健康被害がもたらされることのないように」と留意を呼びかけているとおり、「環境や人に優しく」という根底にある意図は、農業分野と共通項です。まずは、組み入れるべき要素について見ていきましょう。

生息実態調査

ねずみや虫など、対象によって詳細は異なりますが、目視調査、無毒餌による喫食調査、従業員への聞き取り調査、清掃の管理状況の調査、外部侵入の可能性や施設・設備の調査など、生息密度調査法に基づく生息実態調査を実施。的確に発生の実態を把握します。

標準的な目標水準

過度な薬剤の使用を抑えたり、肉体・精神的な負担を軽減したりするという観点から、許容範囲のある「標準的」な目標水準の設定が妥当とされています。ただし、建築物や区画によってケースバイケースです。例えば食品製造分野などにおいては、「PRP」「HACCP」といった食品衛生管理手法が示すとおり、極めて厳しい水準が求められます。

人や環境への配慮

防除対策として薬剤を用いる場合、薬剤の種類、薬剤の使用量、処理法、処理区域について十分な検討が必要です。実際に使用する日時や作業方法など、建築物の利用者や従業員に周知徹底させなければいけません。なお、IPMが意図する「人や環境への配慮」という点において、「薬剤を使うべきではない」というのは誤った解釈です。多様な手法を複合して用いることで、薬剤の使用の「最適化」を目的としています。

有効かつ適切な防除法の組合せ

対象区域の調査状況に応じて、薬剤や捕獲トラップを利用したり、侵入経路の封鎖といった防虫・防鼠工事を施工したりと、必要な防除法の組み合わせによって環境整備を含めた発生源対策、侵入防止対策を実施します。共用者のある建築物では、建築物維持管理権限者の責任のもとでの実施が必須です。

評価

防除対策について、有害生物の密度と防除効果などの観点からIPM導入による効率化の度合を精査し、標準的な目標水準に照らし合わせて評価します。また、防除結果については、費用対効果などの観点をさらに加えた上で、対策と同様の手順によって評価を行います。

IPM(総合的有害生物管理)の実施手順

まずは事前準備として、IPMを実施する組織作りが必須です。建築物、区域、企業など、実施対象のおかれた環境で全体を統括する責任者を選出し、手順ごとの担当者と役割分担を決定します。加えて、施設・設備の管理状況や被害状況、周辺環境の確認を万全に行い、調査区域の分類、期間や時期、作業方法など、全手順とその内容をふまえた作業計画を策定しなければなりません。ここでは、手順について詳しく解説していきます。

①目標水準の設定

環境衛生上、良好な状態が保たれている「許容水準」、対策を講じなければ今後において問題になる可能性がある「警戒水準」、発生や目撃報告があり、直ちに防除作業が必要な「措置水準」という3段階において、事前確認から判明した状況に基づいて目標水準を設定します。必要があれば、建築物内の区域ごと、あるいは建築物の用途ごとに、柔軟に水準値を設定しましょう。なお、あまりに高い目標設定は禁物です。

②調査

十分な知識を備える技術者が建築物全体において目視を行い、続いて問題があると推定される場所についてはトラップを用いた捕獲調査など、客観的に判断できる調査を実施します。目視にあたっては、該当区域の管理者や従業員にアンケートを実施し、回答を参考にしながらの実施が効果的です。

③調査結果の判定

生息調査の結果、警戒水準、措置水準にある区域については、結果が判明した日から、なるべく間をおかない間隔で必要な防除措置を施します。必要に応じて環境整備が必要な個所の見直しも行いましょう。なお、許容水準にある区域については、通常通りの定期的な清掃や整理整頓など、日常における適切な建物管理を行い、発生源対策に努めます。

④防除作業

措置水準にあると判断された区域においては、環境整備を基本とした発生源対策、侵入対策を施し、併せて薬剤やトラップを用いて防除作業を行います。薬剤の使用は散布範囲の限定を留意し、危険の少ない製剤や手法を優先させましょう。該当区域の管理者や関係者に対して使用許可を得た上で、防除対策後3日間は薬剤使用の旨を告知する掲示が必要です。

⑤効果判定

防除対策を行った区域については、目標水準を達成しているかどうか効果判定を行います。未達の場合は、なぜ目標水準に至らなかったかを精査し、再度の措置が必要です。なお、準備から効果の判定に至るすべての手順は必ず詳細に記録し、データとして蓄積していきます。実施日時、場所、実施担当者、調査方法・結果、決定した水準、措置方法、評価・結果など、詳細に記録することが大切です。

まとめ

IPMでのねずみや昆虫などへの対策は、専門的な知識・施工技術が求められます。中でも、薬剤の使用という部分は、信頼できる専門業者に頼るという選択が安心です。その際には、IPMに基づいた作業に対応しているか確認しましょう。社内で決定していくのが難しい場合は、食品衛生管理専門業者のコンサルティングやサポートに頼るという選択も、万全を期するという意味でおすすめです。

防除対策に用いる清掃・洗浄器具は、家庭用のものではなく、専門業者が取り扱う業務用のものを必ず使うようにしてください。長年のノウハウが生かされており、防除という点において優れた効果を発揮してくれます。またシャッターブラシなどを活用して、害虫などの建物への侵入を防ぐこともできるので検討してみてください。

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