近代~現代の美術品、大阪と関わりのある美術品を展示している美術館

文虫研認定のバーカットMLA(※1)は高品質で取付も簡単、 文化財IPMにはなくてはならない 存在です。

大阪中之島美術館

大阪中之島美術館

約6000点にもおよぶ所蔵美術品を、虫やカビ、湿度などから守るために、厳しい文化財IPM管理体制を敷いている大阪中之島美術館。同館ではその取り組みのひとつとして、扉の防虫対策にドア用ブラシ「バーカットMLA」を設置。虫の侵入防止に役立てています。そこで大阪中之島美術館で主任学芸員を務められている國井様に、バーテック製品を導入した経緯やその評価について詳しく伺いました。

大阪中之島美術館について

Q)大阪中之島美術館の事業内容について教えてください。

大阪中之島美術館は、2022年に開館した美術館です。
2年前に建ったばかりの新しい美術館ですが、実は構想としては約40年前の1983年に大阪市の「市制100周年記念事業」のひとつとしてスタートしており、紆余曲折を経てやっと開館に至ることができました。

大阪中之島美術館 主任学芸員 國井 綾 様

元々は「大阪市立近代美術館」という名称だったこともあって、扱っている美術品は主に、近代から現代のものが中心です。所蔵している美術品は公称で約6000点。構想から開館までの間も美術品の収集を続けていましたし、ご寄贈いただけたものもあって、たくさんの貴重な作品を取り扱わせていただいております。

ちなみに大阪中之島美術館が建つまでは、大阪市内に4つの収蔵庫をお借りして、美術品の数々はそこに分散して保管していました。それがやっとひとつになったということで、今はとても幸せを感じています。

文化財IPMへの取り組み

Q)大阪中之島美術館における文化財IPM(※2)への取り組みについて教えてください。

大阪中之島美術館では、私も含めた学芸員2名が「IPM担当」として、主に次のような取り組みを行っています。

◆清掃・戸締りの徹底
昼食やお菓子などを食べた後は毎回すぐに掃除機をかけたり、すべてのゴミ箱をフタ付きにしたり、扉をすぐに閉じるよう心がけたりと、日頃から清掃や戸締りは徹底するようにしています。

◆館内のゾーニング
館内を「A:収蔵区画」「B:展示区画」「C:管理区画」「D:緩衝区画」の4つにゾーニングして、掃除機や脚立、台車などの機材を各ゾーンごとに使い分けています。なかでも人の出入りのコントロールが効かない「D」から「C」への出入りについては、特に気を付けて管理しています。

◆張り紙・シールによる掲示
各扉ごとに区画を掲示したり、清掃に関する注意事項を壁に貼ったり、どの区域の道具かを記したりと、張り紙やシールなどを使って常に清掃、戸締り、ゾーニングを意識できるような管理も行っています。

すべての扉、機材にはゾーニングのために「A」~「D」のテープを貼付

壁には清掃・戸締りを徹底するための心構えや指示を掲示

◆IPM研修の実施
職員やテナントさんに向けては定期的に、また特設ショップや音声ガイドのスタッフさんに向けては展覧会ごとにIPM研修を行っています。研修では、文化財IPMにおける当館の管理手法をお伝えすると共に、ご協力を仰いでいます。
ショップによっては「お菓子をむき出しでディスプレイしたい」といった要望が出ることもありましたが、そこはご遠慮いただくと共に、当館の管理手法をしっかりと遵守していただけるようお願いしています。

かなり厳しく管理しているので、出入りされている業者さんは面倒に思っているかもしれませんね。
ただ、こうした取り組みは業者さん経由でいろんなところに伝わっているようで、他の美術館さんから当館の文化財IPMの取り組みについてヒアリングされることも増えてきました。
私たちも、開館前はいろんな美術館に文化財IPMについてのお話を聞かせていただいたので、そこは惜しみなくお伝えしています。

出入りの多い扉・隙間の大きな扉を中心にドア用ブラシ「バーカットMLA」を設置

Q)大阪中之島美術館では主にドア用ブラシ「バーカットMLA」を導入されています。その設置状況を教えてください。

外との出入りがあって、かつ隙間のある扉に関しては、ほぼ全箇所に設置しています。特に警備室の前の通用口は、外からの影響を受けやすくて小虫がすごく入って来る場所ということもあって大活躍してくれています。

「バーカットMLA」は全部で70メートル分を購入していて、そのうちの半分くらいが既に設置されています。残りは新たに設置したい扉が出てきた時や、交換の時に使う予定です。

また、最近では「バーカットMLA」だけでなく、新発売の自動ドア専用薄型ブラシ「ドアドアスリム」も、2箇所に設置しました。
これまで、隙間が狭くて「バーカットMLA」を設置できなかった自動ドアへの防虫対策が、これでできるようになりました。

自動ドアには「ドアドアスリム」を設置、開き戸には「バーカットMLA」

他の美術館から勧められたことで「バーカットMLA」の導入を決定

Q)バーテックのドア用ブラシを導入するに至った経緯を教えてください。

バーテックの存在を知ったのは、今から約4年前の2020年。まだ大阪中之島美術館が完成していない頃でした。
いくつかの美術館に文化財IPMの取り組みについてヒアリングをしていくなかで、和歌山県立近代美術館さんと国立国際美術館さんから、「扉の隙間を埋められる良い製品を扱っている会社」として、バーテックのことを教えていただいたのです。

そして「バーカットMLA」なら、簡単に取り付けられるうえ、薬剤を使うことなく虫の侵入を防げるということを知り、迷うことなく導入を決定しました。

Q)ドア用ブラシの導入は、建物が完成した後からでも検討できたと思うのですが、建築段階で導入された意図があれば教えてください。

大阪中之島美術館は、川の目の前に建っています。また敷地内には、たくさんの草木が植栽されています。そのため虫が寄ってくることは確実でした。
私たちは既に虫の侵入を防げる「バーカットMLA」という製品があることを知っているわけですから、だったら早い段階から対策しておこう、という考えに至りました。

Q)建築段階で、どのようにして設置箇所や納品量を決められたのですか?

バーテックの営業担当の方とメールでやり取りしたり、図面を見てもらって設置箇所のアドバイスをいただいたりしながら決めていきました。
ときには「この扉には必要ないんじゃないでしょうか?」と、無駄な設置を減らす合理的な提案もしていただけて助かりました。

扱いやすさと堅牢性を高く評価

ハサミで容易に長さ調整ができる

Q)「バーカットMLA」を実際に使ってみたからこそ感じた、製品としての魅力について教えてください。

ちょっと大きめのハサミがあれば、扉の長さに合わせてカットできて、自分たちだけで簡単に設置、交換できる点は魅力だと思います。
また、ブラシの毛にコシがあるので、いかにも虫の侵入を防いでくれそうな堅牢さがある点は安心感があります。

他の職員からの評価も高いですよ。「ここの扉にバーカットMLAを付けたいです」と、名指しで要望をされたことも何度かありました。皆、それくらい信頼を置いているのだと感じています。
お陰で、図面だけでは分からなかった「思いのほか出入りの多い扉」にも、どんどん「バーカットMLA」が設置されていっています。

「バーカットMLA」の存在が内部的・対外的な信頼と安心に

Q)「バーカットMLA」の導入効果を教えてください。

実際に虫の侵入を防げているという実感があります。
というのも、大阪中之島美術館はいわゆる「中洲」になっている場所にあるので湿気が多く、ゴキブリなどの虫が非常に多く生息しています。また、夜になると照明にたくさんの虫が寄って来ます。
そういう環境にも関わらず、館内にはあまり虫の侵入はありません。もちろんゼロではありませんが、例えば虫の亡骸ひとつ取っても、外と内では明らかに数が違います。しっかりシャットアウトできていることは間違いありません。

ただ、開館時から取り付けている製品ですので、ビフォーアフターでの比較は難しいところですね。
とはいえ、それ以外で当館で行っている防虫対策は扉をこまめに閉める程度。薬剤なども基本的には使っていないため、「バーカットMLA」の効果は大きいと思います。

Q)虫の侵入という実利面以外での効果は感じられましたか?

内部的・対外的な信頼と安心に繋がっている点です。

内部的な点で言うと、実際に虫の侵入を防げている実感があることです。「公益財団法人文化財虫菌害研究所」が、唯一「文化財保護用の防除器材」として認定しているブラシ製品という点も、その信頼、安心をより高めてくれていますね。とても頼もしく感じています。

対外的な面で言えば、目に見えて取り組みが分かるところです。
当館にはいろんな方々が視察にいらっしゃいます。そんな時に文化財IPMの取り組みのひとつとして、「バーカットMLA」の設置状況を見ていただいています。
私たちがここまで気を配って対策をしているという事実を、自負を持って紹介できるという点は、大きなメリットだと思います。

同じ目線で話せる営業担当は力強い存在

Q)バーテックの営業担当についての評価を聞かせてください。

力強い存在だと思っています。
私も保有する「文化財IPMコーディネーター」の資格を持っていらっしゃることもあって、同じ目線で話をすることができますし、私たちが心配していることをすぐに理解してくださいます。
ときには私たちが抜けてしまっている視点に気づいて、提案やアドバイスをしてくださることもあるので、とてもありがたいですね。

「文化財IPMコーディネーター」の資格を持つ
バーテック営業担当 清水

より安全な環境を担保するために文化財IPMへの取り組みに注力

Q)今後の展望を教えてください。

大阪中之島美術館は近現代美術館を謳いながらも、古いものから新しいものまでいろいろな展覧会を企画、開催しており、お陰様で開館以来たくさんのお客様にご来館いただけています。
今後も、そうした幅広い内容の展覧会を、作品にとっても人にとっても安全な環境でやっていきたいと考えています。

その安全のため、文化財IPMへの取り組みは、今後も高い基準を守り続けなければいけません。人間、だんだんと気が緩んでいくものです。例えば荷物を地面に置かないとか、ちゃんと掃除するとか、そういった地道なところからしっかり守り続けることが大切です。

バーテックの製品は、私たちの文化財IPM管理にはなくてはならない存在です。おそらく他の施設にとっても、文化財IPMの取り組みとして防虫対策を考えるときには、最初にバーテックの名前が挙がるのではないでしょうか。

「バーカットMLA」は価格帯もフレンドリーですし、手近なところから防虫対策を始めるにあたっては、とても良い製品です。今後もそうした製品を上手く活用しながら、安全に美術館の運営を進めて行きたいと思います。

写真左から、弊社・新井、弊社・清水、國井様。

お忙しい中、ありがとうございました。

取材日時 2024年7月
取材・執筆 カスタマワイズ
※ 業務内容、写真、インタビュー内容は取材当時のものです。
※ 所属組織は2024年7月3日時点のものです。


※1 文化財虫菌害防除器材:「公益財団法人文化財虫菌害研究所/文虫研」の認定する器材

※2 文化財IPM……虫やカビなどの有害生物被害から文化財を守るために、予防や環境整備、発生時の対処などを管理すること

導入製品

大阪中之島美術館

所在地:大阪市北区中之島4丁目3番1号
開館:2022年2月2日
事業主体:地方独立行政法人 大阪市博物館機構
管理運営:特別目的会社 株式会社大阪中之島ミュージアム
Webサイト:https://nakka-art.jp/
大阪中之島美術館は、2022年に開館された大阪市北区にある美術館です。近代~現代の美術品、大阪と関わりのある美術品を中心とした約6000点の作品を所蔵している点(2024年4月現在)、また日本の美術館として初めて「コンセッション方式」と呼ばれる運営方式を採用している点が特徴。特別目的会社・株式会社大阪中之島ミュージアムと、地方独立行政法人・大阪市博物館機構とが密に協力しながら、美術館の運営を行っています。
大阪中之島美術館

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