【コスト削減】につながる液浸冷却とは?仕組みや重要性、導入のメリットについて解説
液浸冷却とは、特殊な液体にサーバーを浸し直接冷却する方法です。空冷式と比較して運用コスト削減などのメリットがあるため、データの使用量が多い現在では効果的な冷却方法として注目を集めています。今回は液浸冷却の仕組みや重要性、導入メリットなどについて解説します。
液浸冷却とは?具体的な仕組みや重要性、導入のメリットについて解説
液浸冷却とは、専用の液体に直接サーバーを浸して冷却する方法のことです。従来の空冷式や水冷式と比較して、運用コストの削減や故障率の低下など、さまざまな面でメリットがあります。ただし導入のハードルは若干高いため、場合によってはコンテインメントのような方法も検討しましょう。
今回の記事では液浸冷却の仕組みや重要性、導入メリット、利用する際の注意点などについて解説します。
液浸冷却とはどんな仕組み?
液浸冷却とは、データセンターにあるサーバーを冷却する仕組みのことです。絶縁性(電気を通さない性質)を持つ液体の中にサーバー本体を丸ごと浸し、機器に直接冷媒を触れさせることで、効果的にサーバーを冷却できます。サーバーを浸す絶縁性の液体としては、「フッ素系不活性液体(フロリナート)」「シリコンオイル」などを活用することが多いです。
絶縁性のある液体にサーバーを浸すため、通常と同じように機器のコネクター抜き差しなどを実行できます。機器がショートする心配もありません。
液浸冷却では、簡単に言うと以下のサイクルを繰り返すことでサーバー本体を冷却します。
- 液体が気化して蒸気となり上昇する
- サーバー上部にある冷却コイルに蒸気が付着し、液体に戻り重力で下に落ちる
- 落下した液体がサーバーを冷やす
気化と液化をサイクルすることで冷却できるため、従来の空冷方式(空気によるサーバー冷却)や水冷方式(水によるサーバー冷却)とは異なり、ポンプやファンを設置しなくても利用できます。
液浸冷却の種類は2つ
液浸冷却には、主に以下2種類があります。
- 単相式
- 二相式
単相式
単相式とは、以下のような流れでサーバーを冷却する仕組みを指します。
- 冷却液でサーバーを冷やす
- 温かくなった液体が上部に移動する
- 液体が排出される
- 外部システムで冷やした液体を再びサーバーに注入する
単相式では、液体の状態のままシンプルなサイクルを繰り返して冷却する点が特徴です。
二相式
二相式とは、以下のような流れでサーバーを冷却する仕組みを指します。
- サーバーを冷やす
- 液体が気化して蒸気となる
- 蒸気が冷却コイルで液体になる
- 液体が落下して再びサーバーを冷やす
単相式とは異なり、気化と液化を繰り返してサーバーを冷却します。サーバーを浸す液体は沸点が低く発熱部分に触れると気化するため、二相式の仕組みを実現できるのです。
液浸冷却のメリット
液浸冷却の主なメリットは以下の4つです。
- サーバーの冷却コストを削減できる
- サーバーの故障率を下げられる
- 従来よりも設置面積を取らない
- 冷却時の騒音を削減できる
サーバーの冷却コストを削減できる
液浸冷却は、従来の空冷方式や水冷方式と比較して冷却コストを削減できます。
液浸冷却では、サーバー本体を直接冷媒に浸して発熱部分を冷やすため、機器の冷却効率が高いです。冷却効率が高ければサーバーを冷やせるスピードも早まるため、電気代の節約につながるでしょう。
さらに、液浸冷却では従来より必要な設備が少ないため、設備費用についても削減できます。液浸冷却では、主に「気化した蒸気を液体に戻す」という循環によって運用されています。自然な流れを利用して冷媒を循環させるため、従来の冷却に必要なファンやポンプを設置しなくても利用可能です。
サーバーの故障率を下げられる
液浸冷却では、一定の温度を保った密閉空間に液体を満たします。密閉空間では酸素が失われ環境の変化も発生しないため、「空気の急激な温度変化」などによる故障を避けることが可能です。
サーバーの故障率を改善できれば、データ破損などのリスクも軽減できるため、先述した冷却コストと合わせて自社の負担を減らせます。
従来よりも設置面積を取らない
液浸冷却で使う設備は、従来の空冷方式などで利用するラックよりもサイズが小さいです。サイズが小さければ設置に必要な敷地面積を節約できるため、サーバールーム内の省スペース化を実現できます。スペースに余裕が生まれれば、より高密度にサーバーを設置するという選択肢も生まれるでしょう。
冷却時の騒音を削減できる
従来の冷却方式では、ファンやヒートシンク、ポンプなどの設備が騒音を発生させるケースもありました。液浸冷却では、ファンなどの設備が不要なため冷却時の騒音を削減できます。
データセンターの稼働機会が増えた現在では効率的な冷却が必須
現在では、5GやIoT、AIなど多様な種類のデータが取り扱われるため、データ量は膨らみサーバーの稼働機会も増加しています。サーバーの稼働機会が増えれば全体の発熱量も膨らむため、従来よりも効率的な冷却手段を確保することが重要です。
もしも効率的な冷却方法を導入しなければ、稼働に必要な電力量は「2050年に現在の4,000倍」まで増加すると予測されています。電力消費量の増加はコスト増大だけでなく環境にも悪影響を与えるため、液浸冷却のような効率的な冷却方法の導入が期待されております
参考URL:https://www.jst.go.jp/lcs/proposals/fy2021-pp-01.html
液浸冷却のデメリットは「初期投資の大きさ」
液浸冷却は、運用コスト削減だけでなくサーバールーム内の省スペース化という観点からも、有効的な方法です。ただし、液浸冷却を導入する際は「初期投資の大きさ」に注意しましょう。
液浸冷却では、サーバーを冷やす冷媒として「フロリナート」「シリコンオイル」など、特殊な液体を使います。いずれの液体も値段が高額であるうえ、フロリナートの生産シェアトップを誇る3M社が「2025年末までに生産を全廃する」と決定したことから、入手の難易度は上昇しています。
液浸冷却の運用中はコスト削減を期待できますが、値段や生産量の低下といった要因により、そもそもの導入ハードルは高いでしょう。
液浸冷却以外でもサーバーは冷却できる
液浸冷却は運用コストの削減や故障率の低下、省スペース化の実現など、多くの面で魅力がある手法です。しかし上記で解説したように、導入時のハードルは高いため利用を躊躇する企業が多いかもしれません。
液浸冷却の導入が難しい場合は、コンテインメントという方法を検討しましょう。
液浸冷却以外の方法として「コンテインメント」が効果的
コンテインメントとは、サーバールームの空調効率を改善する仕組みのことです。サーバールーム内に流れる熱気と冷気を物理的に分離し、混ざり合わないようにすることで冷却効率を改善できます。
コンテインメントの方法としては、以下の2つが挙げられます。
- ホットアイルコンテインメント
サーバーから排熱された熱気を冷却する方法。ラックの排気側を密閉して熱気を閉じ込める
- コールドアイルコンテインメント
空調設備が送り込んだ冷気を閉じ込めて冷却する方法。ラックの吸気側を密閉して冷気を閉じ込める
液浸冷却と比較したコンテメイントのメリット
液浸冷却と比較すると、コンテインメントは以下の点で優れています。
- 液浸に比べて導入コストが低い
- 基本的にどのようなサーバーでも冷却できる
コンテインメントの場合、フロリナートのような特殊な液体を利用しないため、導入コストを抑えられます。もちろん運用コストも削減可能であり、空調の設定温度を上げることで省エネ効果をさらに引き出せます。
また、コンテインメントは基本的にどのようなサーバーでも冷却できる点が魅力です。液浸冷却の場合は、液体に浸しても問題ないタイプのサーバーを使う必要があるため、その分のコストは発生します。
コンテイメントの効果を高めるにはバーテックのブラシがおすすめ
コンテインメントは単体で導入しても冷却効率の改善につなげられますが、専用のブラシも装着することで効果を高められます。コンテインメントにおける「専用ブラシ」とは、掃除に使うものではありません。コンテインメントによって発生した圧力差を解消できる製品を指します。
コンテインメントを導入すると、上記で解説した「コールドアイル」「ホットアイル」の各内部において、圧力差が発生することがあります。圧力差が生じると、冷却ファンの回転数が増えて故障を引き起こすかもしれません。
バーテックのヒートシャット・ブラシのような専用ブラシを取り付ければ、空気の流れと圧力をコントロールし、故障を防ぎながら冷却効率を改善できます。
バーテックのヒート・シャットブラシは、サーバーラックの形状ごとで「ビス止めフレーム」「差し込みフレーム」などの種類を使い分けできるため、幅広い企業で導入可能です。
具体的に「ブラシを取り付けたことによる違い」を解析した資料については、本記事文末のリンクからお申し込みいただくと閲覧できるため、ぜひご活用ください。
自社の予算に合わせて適切な冷却方法を選択しよう
液浸冷却には運用コストの削減や省スペース化、サーバー故障率の低下など、さまざまな点でメリットがあります。ただし、特殊な液体を使う必要があるため、導入ハードルは若干高いです。
液浸冷却以外にも、コンテインメントのように別のサーバー冷却方法もあるため、自社の予算に合わせて最適な手法を選ぶことが重要です。もしも「コンテインメントでサーバーを冷却する」という場合は、バーテックのヒートシャットブラシのように、専用ブラシを使ってさらなる冷却効率化を目指しましょう。