進まないデータセンターの省エネ化、「排熱対策」を考える
パリ協定をきっかけに世界的に省エネ化への意識が高まっています。しかし、「高密度化」されているデータセンターの省エネは、さまざまな問題点が解決せず進んでいないのが現状です。2022年に、データセンター業にもベンチマーク制度が導入された中、省エネ化が進まない現状や問題点を踏まえて効率よいデータセンターの排熱対策について紹介します。
高まる「省エネ化」への意識
「省エネ化」の背景
中国やインド、そして急激な人口増加や経済発展にともない、アフリカ全体でのCO2排出量が増えてきています。CO2排出量の上位10カ国には、開発途上国も含まれるようになってきました。そこで、温室効果ガス削減のためには、先進国だけではなく、開発途上国も含めて世界各国が協力して取り組んでいく必要があるのです。そこで、2020年以降の気候変動問題に関する、国際的な枠組みとして「パリ協定」が2016年に発効されました。これは、1997年に定められた「京都議定書」の後継となるものです。「パリ協定」のもと世界ではCO2を始めとした温室効果ガス排出削減の取り組みが進められています。
参考URL:https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h29/pdf/3_1.pdf
データセンターに求められる「省エネ化」対策
今、データセンターを取り巻く環境が変化しつつあり「省エネ化」が求められています。
データセンターの消費電力の現状
データセンターでは処理するデータ量が爆発的に増加しています。これによって多くの電力を消費しているのです。資源エネルギー庁が発表するエネルギー需給実績によると、2020年の総消費電力量に占めるデータセンターの消費電力の割合は2.1%となりました。データセンターの消費電力量は、今後も年を追うごとに増えると予測、2030年には総消費電力量予測に対して、データセンター消費電力の割合は3.1%になると見込まれています。
データセンター業にもベンチマーク制度導入
資源エネルギー庁は、ベンチマーク制度により省エネを推進しています。ベンチマーク制度とは、事業者の省エネ状況を業種ごとの共通の指標を⽤いて評価し、各事業者が⽬標の達成を⽬指し、省エネ取組を進めるものです。省エネの状況が他社と比較して進んでいるか遅れているかを明確にし、進んでいる事業者を評価するとともに、遅れている事業者には更なる努力を促します。この「ベンチマーク制度」は、2022年4月に見直しが行われ「データセンター業」も含まれることになりました。
ベンチマーク指標としては、データセンターのエネルギー使用効率を測るPUEが採用され、そしてその目標値が「1.4」と設定され、2023年度からの報告義務が課されています。
(PUEは、データセンター全体の消費電力量(kWh)/IT機器の消費電力量(kWh)で算出)
参考URL:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/institution/
今後の見通しから考える「省エネ化」対策
データセンターの「省エネ化対策」として、ICT機器のメーカーなどによる省エネ化の取り組みが始まっています。しかし、それ以上に重要なのはデータセンター内の「省エネ化」です。データセンターは、高密度化が進む中で、省エネ化に向けてさまざまな課題が生まれており、それらの対策の必要性に迫られているのです。
データセンターにおける問題点
省エネ化に向けて、データセンターにおける問題点はどんなところにあるのでしょうか。
ICT機器の排熱によって出現する「ホットスポット」
データセンターのICT機器の多くは、前面から冷気を取り込み背面から排気します。そして、その排熱によって部分的に温度が高くなる「ホットスポット」という現象が発生しやすくなります。サーバは、温度が高くなると、パフォーマンスが悪くなり、故障につながる可能性もあるため、ホットスポットが発生した場合は冷却する必要があります。
しかし、通常の空調システムの場合、ホットスポットが発生しても部分的な冷却ができないため、やむを得ずデータセンター全体を冷却して対応してしまいます。そのため、ホットスポット以外の場所まで冷却してしまい、電力消費の無駄使いが生じています。
データセンター冷却費用の上昇
増加するデータの処理をするために、サーバーは年々小型化、高性能化しています。このため、データセンターのICT機器は非常に高い密度で設置された状態となっているのです。それにより、データセンターの発熱量も増加し続けています。熱は故障や誤作動を招く原因にもなるため、サーバーは安定的な冷却が必要な状態ですが、部分的な冷却が難しいため、やむを得ず空調機を増設し全体を冷やすといった対応になるのが一般的です。しかし、このケースでは空調機の追加投資やそれに伴う電力量の消費も発生してしまいます。電力消費量の増加は、費用だけでなく地球環境保護の観点からも問題があります。省エネ対策は、ベンチマーク制度が始まったデータセンターにおいても避けられない課題となっているのです。
サーバーを増加したくても設備の容量が追いつかない
データセンターでは、サーバーを増加したくても、空調や電源設備の容量が追いつかず、増やせないというケースが多く見られます。仮に空調や電源設備に余裕があったとしても、複数のサーバーが設置されたラックは相当な重量となっています。このため、これ以上ラックが追加できない状況に置かれている場合もあるのです。
データセンター「省エネ化」への動き
コロナ禍以降人々の生活パターンは劇的に変化し、買い物も仕事もインターネットを通じて在宅でできるようになりました。そのためインターネットの活用が進み、データの流通量が飛躍的に増大、サーバーにも相当な負荷がかかってきています。高速処理が進むにつれてICT機器からは多くの排熱が生み出され、その排熱処理が大きな課題となっています。
進化するデータセンターの排熱対策
これまで、データセンターの排熱対策は、サーバー全体を冷却しようとする方法が主流でした。しかし、最近では、高性能なサーバーが密度の高い状態で設置されるようになったことから、データセンターの発熱量は飛躍的に増えています。それに合わせて、冷却方法も少しずつ進化しているのです。
空気の性質を利用した賢い冷却方法
データセンターのICT機器は、基本的に前面から冷気を吸い込んで、後面から暖かくなった空気を排出します。その特徴を配置すると、前列に設置したICT機器の暖かい排気を後列のICT機器が吸気し、後列の冷却が一向に進まなくなってしまいます。
そこで、サーバーラックに設置しているICT機器の前面同士と、後面同士を向かい合わせるように設置。さらに、冷気と排熱が流れるエリアをそれぞれ囲い込んで、空気が混ざり合わないようにすることで、効率的な冷却が可能になるのです。
効果的な空調設備の在り方の一例
世の中のデータセンター全体の電力使用量を見ても、日本では世の中全体の1%、世界では2%の電力をデータセンターで消費しており、今後も年間8~10%程度の割合で増加していくと予想されています。データセンターの省エネルギー、グリーン化は、技術的にも、経営的にも、環境的にも大きな課題であります。
次に、効率的な空調設備のありかたの一例として、アイルキャッピングを紹介します。アイルと呼ばれるラック間の通路には、コールドアイルとホットアイルの2種類があります。空調機から送り出された冷気は床下を通り、コールドアイルの床の開口部から吹き出てきます。この冷気がラック内を吹き抜けることで、搭載されている機器を冷却します。そして暖かくなった空気はラックの反対面からホットアイルに排出され、室内上部を通って空調機に戻るという仕組みになっています。ホットアイル側の床は隙間がなく、空調機からの冷気と直接混じらないように工夫されています。さらに、空きラックやラック内の隙間には、ブランクパネルを搭載することで、無駄な冷気の流れを防止するとともに、冷気や暖気の回り込みを抑止することで効率化を図ることができます。
今後の見通し
同社の調査によると、2025年のデータセンターの国内市場規模は2兆7,987億円。 2020年から2025年の年間成長率は12.5%になると予測されており、クラウドサービスの市場拡大を軸に需要の高まりは続くと期待されています。
できることから進める「省エネ化」対策
できることから進めるデータセンターの省エネ対策として、バーテックのヒートシャット・ブラシの導入をオススメします。
バーテックのブラシが空気の流れをコントロール
ヒートシャット・ブラシで、ラック内の隙間をふさぐことにより、暖かい空気と冷たい空気を分離させ、サーバーラック前面と後面の圧力の差が、パネルによる密閉時と比べ低く抑えられます。
商品の特長
ヒートシャット・ブラシを設置する際は、施工や電源が不要です。フレームはゴム製なので、サーバーラックのサイズに合わせて簡単にカットできます。さらに差し込みフレームは差し込みでの取り付けが可能であり、穴あけやビス止めなども必要ありません。
手軽に進められる省エネ化対策
バーテックのヒートシャット・ブラシは、隙間を塞ぐことが目的ではなく、効率的に排熱を行えるように空気の流れをコントロールするために設置され、その結果、省エネ効果が向上し、利益への貢献のみならず地球環境にも貢献しています。
まとめ
「ブラシで世界を変えよう」というブランドビジョンを掲げているバーテックは、ブラシを通して現場で起こっている問題を解決するだけでなく、社会問題や環境問題の解決にまで貢献していきたいという想いを込めています。データセンターの排熱対策としてぜひ取り入れてください。
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