ブラシ加工によるバリ取りの基礎と事例

ブラシ加工によるバリ取りの基礎と事例

ブラシの選定ポイント

1:毛材

バリ取りの広範囲でブラシを活用することが可能である。
しかし、半数以上のユーザーはブラシの選択方法、使用方法の間違いでブラシの有効性を発揮できていない。
ブラシには様々な毛材がある。スチールワイヤー、ステンレスワイヤー、真鍮等の金属素材のほか獣毛・植物毛・ナイロン・研磨材入りナイロン・セラミックなど多くの素材を使用できバリの大きさや形状、ワーク形状や材質の違いにより使い分けることが可能である。
しかし、この素材の選択を間違えると効果を発揮することなくブラシは無力となる。

 

2:ブラシ形状

また、ブラシ形状の選択も大きなポイントとなる。
ワークにあった形状のものを使用しなければよい効果は出ない。
使用法についても、適切な方法をとる必要がある。研磨材入りナイロン以外の素材のブラシは、すべて毛の先端が作業するので、強い加圧をかけるとバリを取るどころかバリを倒してしまい、取れづらくしてしまうことになる。
ブラシ使用のポイントは、毛の先端でバリをたたき除去することになる。
しかし、反対に研磨材入りナイロンはワークに毛を押し付け、ブラシ素材の側面を使用しエッジ処理などを行うことが有効とされている。

 

よって、この写真のような凹凸のある複雑な形状であっても、ブラシ毛材がワークになじみ、細部のバリまで除去することが可能となる。
ブラシの有効性を発揮させるのがロボットの活用である。ブラシは1本1本細い素材がフレキシブルにワークにあたるため、セッティングを容易にすることが可能である。
下の写真のようなワークのエッジバリをロボットや自動機で砥石や塗布研磨材など使用する場合、ピンポイントでバリをねらう必要がある。その場合正確でピンポイントのセッティングが必要となり高度な技術が必要となるが、ブラシの場合フレキシブル性があるため容易にセッティングが可能となる。

 

ブラシ活用のポイント

1:回転数の設定

ブラシの活用のポイントとして、回転数の設定も大きなポイントとなる。
速ければよいというものでなく、バリの高さや厚みによっても回転速度の設定は重要となる。
ブラシ外径や形状によっても変わるが、ワイヤーブラシ等先端で作業するブラシは、回転数を上げることにより効果を高くできる。
ブラシ素材の先端がワークをたたきつけ除去作業をするため、ワークへの接触量が多いほど除去能力は高くなるので、回転数を上げることが有効である。
しかし、研磨材入りナイロンの場合は、金属素材のように回転を高くするのでなく、ゆっくりとした回転が有効性を発生させることができる。
毛材をワークに押し当て、毛材の側面でゆっくりと撫でるようにエッジに押し当てることで、なめらかな仕上がりになる。このような押し当てるブラシの効果をワイピングアクションという。

 

2:ピーニング効果

ブラシには他にも有効な活用がある。それはピーニング効果である。
金属素材のブラシは、ショットピーニング効果も得ることが可能である。
ブラシでのピーニング効果は一般にあまり知られていないが、通常のショットピーニングに匹敵する効果を得ることができる。
なぜブラシがピーニング効果なのか、と思われるかもしれないが、ブラシは一本一本の素材がワーク表面をたたき、ピーニングと同様の効果を得ることができる。
金属素材ブラシは高速で回転することにより、ブラシ先端がワークにあたり、その衝撃によりピーニングのように鋼球をたたきつけるのと同じ効果を得ることになる。
ブラシのピーニング効果により、残留圧縮応力が表層に与えられるため、エッジの疲労強度が向上することが検証されている。
通常のショットピーニングでは、衝撃力が強く薄板などでは変形の恐れがあるが、ブラシではほとんど変形の心配がない。
ある試験では、SPCCの素材を使用しワイヤーブラシで素材を研磨し、表面硬さを測定したところ、加工前は157HVの表面硬さの素材が、研磨後933HVの数値をえられた。
このように、ブラシの活用方法は様々で、正しい製品、使用方法を選択すれば幅広い作業に活用できる工具である。

 

 

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