日本ではJISのようなパワーブラシの基準がない? JISとANSIの違いを比較

日本ではJISのようなパワーブラシの基準がない? JISとANSIの違いを比較

研磨から研削まで、さまざまな製品の安全性や機能に大きな影響を及ぼす表面処理の工具として使用されるパワーブラシ。容易に使えて便利な研磨工具である反面、取り扱い時に注意しないと危険を伴う研磨工具でもあります。長時間の激しい使用に耐えうる構造になっているパワーブラシの安全基準や、使用者が選ぶ基準などについて解説します。

JISとANSIの違い

実は日本で作られているパワーブラシには、JISのような審査基準がありません。回転数の表示義務もないため、一般に流通しているパワーブラシの中には適正な使用最高回転数の表示のないものもあります。しかし、安全に使用するためには駆動側工具とブラシの回転数を合わせるなど、気をつけるべきポイントがいくつかあり、アメリカ規格協会(ANSI)では細かい規程が定められています。
※バーテックでは米国国家規格協会「ANSI B165.1-1911」を参考として、製品の基準を表記

アメリカ規格協会(ANSI)は、日本の日本産業規格(JIS)に相当するとされています。JISは政府(大臣)が制定する規格であり、ANSIは政府から独立した私的な非営利組織からなっています。ここでは両社のより違いをより詳しく見ていきましょう。

JISとは

JISは、日本産業規格(Japanese Industrial Standards)のアルファベットの頭文字を取ったもの。日本の産業製品に関する規格や測定法などが定められた日本の国家規格を意味します。

製品作りを自由に放置すれば、多様化・複雑化・無秩序化してしまいます。したがって、国レベルの「規格」を制定し、これを全国的に「統一」または「単純化」しているのです。例えば、日本のトイレットペーパーはサイズが定められており、そのため国内のどのホルダーにも取り付けることができます。

JISは、自動車や電化製品などの産業製品生産に関するものから、文字コードやプログラムコードといった情報処理、サービスに関する規格まであります。これを守ることによって、生産の効率化や安全・健康の保持、環境の保全等につながります。一般的に「標準(=規格)」は任意のものですが、法規などに引用された場合は強制力を持ちます。

ANSIとは

ANSIとは、アメリカ規格協会(American National Standards Institute)の頭文字を取ったもので、アメリカの工業製品の標準化・規格化を行っている団体です。1918年に設立されたアメリカ工業標準委員会(American Engineering Standards Committee)を前身とし、1969年に現在の名称になりました。国際標準化機構(ISO)設立メンバーであり、ISOや国際電気標準会議(IEC)、国際認定フォーラム(IAF)にアメリカ代表として参加しています。アメリカの国内規格機関ではあリますが、ISO等の規格に先だって決まることも多く、ANSI規格がISO規格になることもあります。ANSIは国際的に模倣されている、権威ある機関なのです。

バーテックでは社内安全基準を独自に設定

お客様に安心と安全をお届けするために、品質管理と品質調査が重要であると考えるバーテックでは、製品が仕様通りの性能を備えているかどうかを検査・測定しています。ANSIを利用した独自のノウハウがあり、ブラシの引張強度測定や、破壊検査、バランス検査、振動測定検査などで安全・安心を確保しています。

ANSIを利用して破壊試験を実施

バーテックが自社で行なっている試験について詳しく紹介します。

1.破壊試験機

パワーブラシを破壊試験機に取り付けて、そのブラシが表示された最高回転数でも安全に使用できるかを測定するもの。2万回転近くの回転数で使用されるブラシが万が一破損した場合、重大な事故につながる可能性があります。日本にはパワーブラシの国家基準がなく、バーテックでは米国国家規格協会「ANSI B165.1-2019」を参考として破壊試験を実施。製品の最高回転数の基準を満たしていることを確認しています。

2.動釣合試験機

動釣合試験機とは、自動車やオートバイの部品、モーターや冷却機・扇風機の羽根など電機産業製品の生産現場における回転体のバランス検証試験に用いられる装置のこと。回転するワイヤー・カップブラシなどの振動の大きさを測定することができ、高速回転するブラシの重心と回転中心の「ズレ(偏芯)」が許容範囲内であるかどうかを検査するものです。

3.人体振動分析器

手持工具にワイヤー・カップブラシを取り付けた場合、手腕振動ばく露量の数値を測定する装置のことです。振動を継続的に腕に受けることにより、手腕振動障害である白ろう病につながるリスクがあります。手に受ける振動とブラシのバランスは相関関係があり、バランスが悪いと手により多くの振動が伝わります。バーテックでは手腕振動障害の予防につながる、振動値の低いワイヤー・カップブラシの普及に努めています。

安全講習会受講のすすめ

どれだけ製品の品質テストをしても、誤った使い方をすれば事故につながります。製品を作るだけでなく安全に使っていただくため、バーテックでは講習会を行なっています。講習会の内容はパワーブラシの仕様、耐久性、パワーブラシの効果的な使用方法、取り扱い上の留意事項の説明、質疑応答などです。安全講習会の実施により、パワーブラシの安全使用の動作についての意識付けと理解が深まっています。研磨工具においては「駆動側工具とブラシの回転数を合わせる」ことの重要性を関係者に伝えています。

例えばもしも駆動工具とブラシの耐用回転数が合致していない場合、大きな事故につながる可能性があります。ブラシの選択も含め、パワーブラシを使用する際の安全使用の徹底を行っている「東京エネシス」様の導入事例はこちらをご覧ください。
https://www.burrtec.co.jp/case/enesis/

まとめ

残念ながら日本にはパワーブラシの国内基準がなく、回転数の表示義務もありません。現在使用しているパワーブラシにも適正な使用最高回転数の表示のないものもあり、国内基準の制定が必要であると考えます。使用する機器により適切なパワーブラシを選定するなど、使用者も知識が必要です。正しい使い方について理解し、安全に使用することが明るい未来につながるといえます。

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